日本政治のマヒ:藤田正美の「まるごとオブザーバー」(2/2 ページ)
代表選と為替相場、民主党にとってはどちらが大切なのだろうか。内輪争いのとばっちりにしてはダメージが大きすぎる。
被害者は国民
政治とは国民を説得することである。菅首相が大好きなイギリスでは、保守党が財政赤字を減らすために歳出カットと増税を打ち出して、労働党から政権を奪った。そして世界的には「出口戦略」(景気を回復させるために財政による景気刺激策をとってきたが、それを段階的に縮小すること)は時期尚早であるとされているのに、財政再建に向けてラディカルに舵を切ってしまった。もちろんこの政策が間違いである可能性もあるが、国民に痛みを受け入れるように説得してきたのである。
日本の有権者も増税は絶対に嫌だと思っているわけではない。アメリカはともかく欧州諸国に比べて国民負担率(税金と社会保険など)が低いことは承知しているし、GDP(国内総生産)の2倍近い借金を抱え続けるわけにはいかないことも承知している。さらに老人の人口比率がこれからどんどん高まっていくこと、それに伴って社会保障の負担が増えていくことも承知している。こうした問題を解決するにはどこかで増税が必要であることは理解していると思う。
ただその前提として、いったい民主党が政権につく前に主張していた「20兆円の財源などちょっと節約すればすぐに出てくる」といったことや、いわゆる「埋蔵金」がどうなったのかについてきちんとして説明が必要だ。もしそれらの主張が誤りだったのなら、民主党はそれを国民に説明し、謝罪すべきなのである。
これも政治の透明化の重要なステップだと思う。自民党時代には、政策の修正はどこかでうやむやに行われることが多かった。多くの場合、国民への説明は後回しにされるか、あるいはまったくなされなかった。民主党政権になったら政治のあり方が変わると期待した国民は多かったはずである。
もし、民主党代表選が「派閥の争い」に見えるようなことがあれば、民主党もそう長く政権の座にとどまることはできないだろう。その「被害者」は言うまでもなく国民である。
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著者プロフィール
藤田正美(ふじた まさよし)
『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。
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