なぜ組織は「迷走」するのか:リレーションシップ・クライシスという名の危機(2/3 ページ)
あなたの会社でも、このような声が挙がっていませんか。「うちの会社にはビジョンがない」「上司のマネジメント力が低い」「エンジニアはコミュニケーション力が低い」。これらの声は、リレーションシップ・クライシスに陥っている会社でしばしば聞かれるものです。
リレーションシップ・クライシスのレベル
今回は、リレーションシップ・クライシスの症状についてもう少し詳しく説明します。
リレーションシップ・クライシスはその進行度合いによりさまざまな症状として表れます。「売り上げは七難隠す」と言われるとおり、業績が好調な間は、お互いに気に入らないところが多少あったとしても、「腫れ物には触れず」といったかかわりをするのが大半でしょう。しかし、業績の見通しが悪くなるにつれ、問題が露呈し、リレーションシップ・クライシスがはじまります。
次ページの図はその進行度合いを、7段階のレベルに分類したものです。
はじめは、状況を悲観的に捉えやすいメンバーが警告を発し始めますが、他の人は「確かに重要だけど、他に優先することあるよね」と取り合わない状況になります(レベル1:狼少年状態)。
そのうちに、先行きの厳しさの認識が広がり始めますが、「いいだしっぺが、やりだしっぺ」の状態を避ける為に、表面的なあるべき論だけが組織内に横行しはじめます(レベル2:様子見姿勢)。
時間だけを浪費していく中で、危機意識は議論となって表現され始めますが、それぞれが自分の意見を主張する状態に陥り、議論は平行線を辿り続けます(レベル3:堂々巡り状態)。
何度話し合っても議論がかみ合わないため、「あの人は営業出身だから」とか、「あの人は、財務しかわからないから」とか、場合によっては、「あの人は商社出身だから」という形で、話が合わない理由を文化の違いにするようになります(レベル4:異星人扱い)。
それでも、話し合いが進まないと、相手の能力や、責任逃れの姿勢といったお互いの根本的な人間性を否定し合うようになり、感情的な対立状態に発展します(レベル5:人格批難)。
このレベルにまで到達すると、社内はギスギス感が生まれ、挨拶もまともにしないという状況に陥ってしまっているため、経営批判をする造反組を処分しようと経営者が粛清をしたり、会社に対して見切りをつけて離職したりするメンバーが生じ始めます(レベル6:離脱と粛清)。
ここまでくると、人が入れ替わるので、新風による刷新を期待してしまいますが、実際には「離脱と粛清」の時期に傷ついた既存社員が、如何にこの会社がひどいかを新しく入った社員に吹き込んでしまうため、後ろ向きの風土だけが継承されていきます(レベル7:風土崩壊)。
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