アジアの新興勢力バングラデシュは世界への扉:女流コンサルタント、アジアを歩く(4/4 ページ)
わたしは「アジア新興国」と呼ばれる各国を単独でまわり、現地のリアルな状況を把握すべく、さまざまな産業の企業を訪問している。日本にいると、「アジア新興国」と一括りで考えてしまいがちだが、各国の各産業を生で見てみると、それぞれ状況は異なる。
バングラデシュは世界市場への扉である
先にも述べたとおり、バングラデシュはイスラム教徒が多数派であるものの、ヒンドゥー教徒の人口割合もかなり高く、両者が平和裏に共存している。このことは、イスラム系国家やイスラム系市場との繋がりを持ちつつも、厳格なイスラム系国家に比べ、宗教的・文化的に寛容さを持ち合わせていることを示している。また、バングラデシュが日本と友好的であることも踏まえると、日本企業にとっては、バングラデシュをイスラム市場への扉として捉えることができるだろう。
加えて、バングラデシュは、欧米市場との繋がりが強い。現在は、衣料品産業を中心としたビジネス取引となっているが、既に強固な関係が築かれており、衣料品以外の商材がバングラデシュから欧米市場に供給されるようになる日は近い。つまり、日本企業は、衣料品産業のみならず新たな産業をバングラデシュで育むことによって、その先に広がるアメリカ市場やヨーロッパ市場を視野に捉えることが可能となるのである。
このように、バングラデシュは世界市場への扉と捉えることができる。日本企業は、社会貢献の対象として、或いは単なる生産拠点として、バングラデシュを捉えるのではなく、その先に広がる大きな市場への扉として捉え、中・長期的な戦略を描く必要がある。
著者プロフィール
辻 佳子(つじ よしこ)
デロイト トーマツ コンサルティング所属コンサルタント。システムエンジニアを経た後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズにて、官公庁や製造業等の企業統合PMIに伴うBPR、大規模なアウトソーシング化/中国オフショア化のプロジェクトに従事。大連・上海・日本を行き来し、チームの運営・進行管理者としてブリッジ的な役割を担う。現在、デロイト トーマツ コンサルティング所属。中国+アジア途上国におけるビジネスのほか、IT、BPR、BPO/ITOの分野で活躍している。
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