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対中外交、日本ができること藤田正美の「まるごとオブザーバー」(1/2 ページ)

外交は、20世紀前半のパワーポリティックスから、21世紀は理念や論理が重要に。

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 菅内閣の支持率が低下している。小沢元幹事長をめぐる政治とカネの問題もさることながら、尖閣諸島付近で中国漁船と日本の巡視艇が衝突した事件の処理をめぐって、政府が「逃げている」と見られたことも大きな要因となっているようだ。

国内法に基づいて粛々と進める

 船長が逮捕されて以来、中国の反発は日増しに強くなった。ややヒステリックとも言えそうな強硬ぶりに、菅政権は後手に回るばかりで何も有効な手立てがなかったように見えた。「国内法に則って粛々と進める」と言うのが精一杯、他に適当な言い回しが見つからないために「粛々」という言葉ばかりが耳についた。そこに発生したのがフジタの社員4人の拘束である。軍事管理区域に入って無断で撮影したというのが容疑だったが、船長逮捕に対抗する「人質」だった可能性が高いと思う。そして「人質」に弱い日本政府はたちまちに腰砕けとなり、船長を釈放した。

 本来、日本の国内法に則って手続きを進めると明言していたのだから、それこそ罰金刑でも何でもいいから法的処理を完結させるべきだったと考える。それが筋というものだ。那覇地検が外交を考慮して処分保留のまま釈放するというのは、いかにも筋が通らないし、政府の意思が明確にならない。筋を通すか通さないか、それは外交の舞台で非常に重要なことだと思う。そうしてこそ、日本としての基本姿勢を示すことができる。

 フジタの社員に関しては、面会はもとより、事実関係をしっかりと確認することが政府の仕事であった。仮に軍事管理区域に無断で立ち入ったのだとしても、彼らがスパイであるはずもないのだから、早期に釈放を要求するのが国民を守る政府の役割だったはずだ。しかし政府は事を荒立てないようにして、とにかく釈放してもらうという姿勢だったように見えてしまう。

 今回の日中「紛争」で得られる1つの教訓がここにある。外交とはうまく立ち回ることや駆け引きだけではない。20世紀前半のパワーポリティックス全盛のころならいざ知らず、21世紀の外交は理念や論理こそ重要だと思う。そこの基本姿勢が明確でないからこそ、「東シナ海に領土問題は存在しない」とか「国内法に基づいて粛々と進める」という「決まり文句」ばかりを繰り返した。対中国というより、国内野党やマスコミに揚げ足を取られまいとする姿勢ばかりが目立った。

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