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日本が新興する道「ソーシャルビジネス」女流コンサルタント、アジアを歩く(1/4 ページ)

「新興国」という言葉を聞いて、「ソーシャルビジネス」や「BOP(Base Of the Pyramid)ビジネス」を思い浮かべる方々も多いだろう。バングラデシュにおいても、日本のファーストリテイリングがその取り組みを進めており、注目を集めている。

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 最近では、「新興国」という言葉を聞いて、「ソーシャルビジネス」や「BOP(Base Of the Pyramid)ビジネス」を思い浮かべる方々も多いだろう。ここバングラデシュにおいても、グラミンバンクグループなどがソーシャルビジネスを始め、日本のファーストリテイリングもその取り組みを進めており、いままさに最も注目を集めているビジネス形態であるといえる。本稿では、ファーストリテイリングの取り組みを掘り下げ、新興国でのソーシャルビジネスを日本企業としてどのように進めていくべきかを伝える。

 日本を離れ、一人バングラデシュに訪れているが、わたしがここバングラデシュに滞在している最中、ファーストリテイリングとグラミンバンググループの合弁会社設立が進行している。こうした動きは、ほかの日本企業にも大きな影響を与え、新興国進出における1つのアプローチとして考えられるようになっており、「ソーシャルビジネス」抜きに新興国ビジネスを語ることはできない状況になっている。

 しかし、日本にいるビジネスマンと話をすると、どうもソーシャルビジネスを誤解しているように感じる。一部の側面のみが強調され、全体像を見誤っているのである。この誤解を解かぬままに、新興国でのソーシャルビジネスを考えようとすると、可能性や戦略的な意味合いを過小に評価してしまうことになる。ソーシャルビジネスは、単に労働市場を提供したり、労働技術を指導したり、将来の消費者を獲得したりするためだけのものではない。ソーシャルビジネスの本質は、文化や慣習を動かし、新しい市場そのものを作ることである。

ナショナルスタジアムに隣接しているモスク、ナショナルスタジアムに入っているメーカー「Walton Hi-Tech Industries Ltd」

ソーシャルビジネスに関する一般的な認識

 2010年7月、アパレルブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングのソーシャルビジネスが紙面を賑わした。

 その内容は、まず、貧困・衛生・教育などの社会的課題を、服の企画、生産、販売を通じて解決することを目的として、資本金60万USドル(約5,400万円)の100%子会社「ユニクロ・ソーシャル・ビジネス・バングラデシュ」を9月に設立する。

 この子会社を通じて、グラミンバンクグループのグラミン・ヘルスケア・トラストと合弁会社を10月に設立する。合弁会社の社名は「グラミン・ユニクロ」で、資本金は10万USドル(約900万円)、出資比率はユニクロ・ソーシャル・ビジネス・バングラデシュ99%、グラミン・ヘルスケア・トラスト1%となる。この合弁会社では、品質を保持しながらも貧困層に購入可能な価格設定で衣料を企画・生産・販売するとともに、雇用を生み出すことでバングラデシュの人々の生活改善をサポートするという。

 そして、2010年10月を迎え、わたしは現地でそのあたりの事情を各所から聞くことができた。現地に住む日本人の間でも話題になっており、バングラデシュ・ダッカでは独立行政法人 国際協力機構(JICA)主催によるソーシャルビジネスセミナーが開催され、わたしもこのセミナーに参加した。

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