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日本が新興する道「ソーシャルビジネス」女流コンサルタント、アジアを歩く(2/4 ページ)

「新興国」という言葉を聞いて、「ソーシャルビジネス」や「BOP(Base Of the Pyramid)ビジネス」を思い浮かべる方々も多いだろう。バングラデシュにおいても、日本のファーストリテイリングがその取り組みを進めており、注目を集めている。

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 セミナーの中には、当然ながら、「ユニクロ・ソーシャル・ビジネスの取り組み」というプログラムがあり、その後も、現地バングラデシュでソーシャルビジネスについてのヒアリングなどを行った。バングラデシュのソーシャルビジネスについては、多くの報道が日本でもなされており、当初、これをテーマに記事を書くつもりはなかった。だが、多くの報道内容はソーシャルビジネスの一部の側面でしか語られないことが多いことに気づき、書くことを決めた。

 ソーシャルビジネスとは、少子高齢化や環境・貧困問題などさまざまな社会的課題に向き合い、ビジネスとして事業性を確保しつつ解決しようとする活動の総称とされるが、ソーシャルビジネスの利点や有効性というと、だいたい3つの切り口から語られることが多い。

 1つ目は、社会貢献や社会的意義という切り口である。例えば、新興国、特に最貧国と呼ばれるバングラデシュに工場を建設し、生産拠点を設ければ、そこに労働市場が生まれる。そのこと自体、新興国の人々の生活レベルの向上に役立ち、CSR(Corporate Social Responsibility)を果たせる。また、その際、労働に必要な技術や教養を与えるため、その意味でも社会的意義が深い。つまり、先進国の企業や団体が、新興国やそこに住む人々に手を差し伸べるという観点からの説明である。

 2つ目は、1つ目を前提にした事業の収益性いう切り口である。1つ目に示したように、新興国に工場を建設し、生産拠点を設ければ、労働市場が生まれ、社会貢献となる。一方で、新興国の安い単価を用いて、コスト競争力のある製品を販売することができ、事業の収益性を確保することができる。つまり、新興国との間に、Win-Winの関係が築けるという観点からの説明である。

 3つ目は、1つ目を前提にした新興国市場への進出、そして将来の拡大という切り口である。新興国の市場はこれから確立し、拡大していくことを見据え、社会貢献や社会的意義のあるビジネス活動を入口としてとらえる。つまり、現時点でのビジネス成否よりも将来の市場獲得を目指すという観点からの説明である。

 これらは、確かに、ソーシャルビジネスの利点や有効性を説明する上で、的を射た内容である。しかし、これらの3つは、これまでの経営や企業運営においても重要と考えられる事項をソーシャルビジネスに照らして説明しているにすぎない。また、これらの側面は既存市場を前提としているように受け取られるため、これらが強調されてしまうと、ソーシャルビジネスが持つダイナミズムが見失われ、今後のソーシャルビジネスにおいて重要な要素も見えなくなってしまう。

 ソーシャルビジネスが持つダイナミズムと、今後のソーシャルビジネスにおいて重要な要素とは何なのか。これらについては、ファーストリテイリングがソーシャルビジネスを本格的に開始したいきさつから垣間見ることができる。

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