クライアントにとっての「特別な誰か」を求めて:ヘッドハンターの視点(2/2 ページ)
「スパイみたいでかっこいいよね」などと、よく言われましたが、ヘッドハンターはそんな “かっこいい”職業ではありません。
状況がわからないというのは非常に精神衛生上よくありません。何度電話してもメールしてもなしのつぶてという状況が数週間続いた後、突然クライアント企業が候補者の会社を買収するという驚きのニュースが飛び込んできました。クライアントは発表前にこのことを外に漏らすわけにはいかなかったのです。
「オファーレターにサインするのと退職願を出すのはどちらが先ですか?」と聞かれることがあります。上記のケースでもわかるように、正式なオファーレターにサインする前に退職願は出すのは危険です。何が起こるか最後までわかりません。また、オファーレターにサインせずに退職願を出すと、中途半端な状況で上司や人事と話をすることになります。人間だれしも引き止めてほしいという気持ちが心のどこかにあるのかもしれません。
でもそれは結果的に上司や人事にある意味での責任を押し付けることになると思います。引き止められてとどまったとしても「やめようとした人」というレッテルは付いてしまいます。また転職するはずだった会社がその後大きく成長したら、引き止めた人たちとの関係をギクシャクさせかねません。。もちろんオファーレターにサインする時にはじっくり悩むべきだと思います。わたしは「知恵熱が出るくらい悩んでください。その上で決断したら、決断した自分を信じて振り返らずに頑張ってください」とお願いしていいます。
どんなに事前に情報収集しても入社してみると想定外なことは起こります。事前に十分悩まずに転職すると少しのことでも「こんなはずじゃなかった」と言い出し仕事が手につかなくなる人がいます。十分悩んで決断した人は「こういうこともありますよ!」と状況を前向きにとらえてチャンスに変えられるのです。
著者プロフィール
岩本香織(いわもと かおり)
G&S Global Advisors Inc. 副社長。米国の大学を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。東京事務所初の女性マネジャー。米国ならびにフィリピンでの駐在を含む8年間に、大手日系・外資系企業のビジネス/ITコンサルティングプロジェクトを担当。 1994年コーン・フェリーに入社、1998年外資系ソフトウェアベンダーを経て、1999年コーン・フェリーに復帰。2002年から2006年までAsia/Pacificテクノロジーチームの代表。2010年9月より現職。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.