“理想の上司像は?”は、冗談デショ:生き残れない経営(1/2 ページ)
リーダーシップとは、人間の視点を高め、成果の基準を上げさせ、人間の人格をして通常の制約を超えさせるものである。
理想の上司は「関根勤が1位」に対し、ネット上で「芸人が上司とか最悪だろう」「部下の失敗に大笑いで手をたたく」「もっと高尚な名前を挙げろよ。ビルゲイツとか」と感想が掲載されていた。
なかなか言い得て妙だ。明治安田生命が2010年行った新入社員対象のアンケート調査結果(3月に発表)に対する評価の一例である。毎春、新入社員対象のこの種アンケート調査結果が盛んに発表される。新春に限らず最近も、一般社員対象調査を見かける。わたしは、これらの発表をいつも快く思っていない。
試しに、幾つかのアンケート調査内容をたどってみよう。明治安田生命が2010年3月25日に発表したアンケート調査は、新入社員1030人を対象にした。理想の上司は、男性が関根勤、女性が天海祐希だ。親しみやすいイメージで、声を掛ければ気軽に「ん、なに?」と振り向いてくれそうだからだという((株)ジェイ・キャストのサイトより)。マネジメントとは、そんなに軽いものなのかと思ってしまう。
この調査結果に対してのビズアーク時間管理術研究所の意見は――「とりあえず男性の管理職の方は、新入社員を受け入れるにあたり、関根勤さんを見習って(やれる範囲で)親しみやすく接してみてはいかがでしょうか?」。これに到っては、絶望感に襲われる。
産業能率大学が2010年4月、新入社員498人を対象に理想の上司を調査した。その結果、上位5位は、男性上司ではイチロー・島田紳助・原辰徳・所ジョージ・阿部寛が、女性上司では天海祐希・真矢みき・江角マキコ・和田アキ子・黒木瞳が選ばれた。理由は、イチローは「態度や姿勢が手本になりそう」、天海は「適切なアドバイスをしてくれそう」だ。
イチローについては、産業能率大も分析するように「管理職として職場をまとめる能力への期待というより、厳しい目標を達成するその姿勢を見習いたい」と考えられており、であるなら「理想の上司」ととらえるのは的外れで、「理想の部下」なら分かる。天海については「CMやドラマでのイメージという回答率も高いことから、演じる役柄などから」判断していると見られる。
これも、であるなら理想の上司は「天海」ではなく、「天海が演ずる何々の役の女性」とするのが正確だ。上位5位の中で、唯一原辰徳が、監督という仕事柄、管理職として評価の対象になり得るが、そのほかは、まさに上記サイトのセリフ「最悪だろう」「もっと高尚な名前を挙げろよ」だ。
次は、労働行政研究所が2010年7月に25〜59歳のビジネスマン412人を対象に、インターネットで調査した「ビジネスパーソンの生活スタイルと仕事力に関するアンケート」結果だ。理想とする上司のタイプを有名人にたとえると、ちなみに1、2位は、男性上司ではタモリ(部下を頭ごなしに叱らない、どんな相手とも友好関係を築く印象)、池上彰(職人肌の分析家で、穏やか)、女性上司では天海祐希〈ドラマ「BOSS」で演じたデキル部分とちょっと抜けて見えるイメージ〉、麻木久仁子と勝間和代(知的で理論的でパワフルだが、気軽に接することができそう)が挙がる。いずれにも共通するのは親しみやすさのようだ。どうも甘い上司を望んでいるように思えてならない。
最近の調査結果として、11/5転職サイト「@type」に若手ビジネスマンを対象にした「あなたが思う理想の上司像は?」が、掲載されていた。「上司にしたい有名人は誰?」に対し、ちなみに1、2位は、男性が選んだのが所ジョージ、橋本徹大阪府知事、女性が所ジョージ、真矢みきだ。府のリーダーである橋本知事を挙げたのは理解できるとしても、単に「多趣味で、多くの司会をこなす、面倒見の良い」所ジョージ推薦には、「おいおい、どこまでマネジメントというものを分かって言っているの?」と突っ込みを入れたくなる。
では、どういう上司のタイプが求められるかをまとめてみる。
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