タイ・アパレルメーカーが重視する日本市場、そこに“日本の”優位性がある:女流コンサルタント、アジアを歩く(2/4 ページ)
タイの現地アパレルメーカーの経営陣が重視する「日本市場の動向」。それは何故か? という問いから、日本企業が潜在的に有している優位性を考察し、それを生かした今後のアジア市場展開を考える。
日本市場への進出、やはり面倒?
ターゲット国に日本があることについて触れてみると、これはまだ具体的な計画にはなっておらず、実際、難しいだろうとのことであった。その理由としては、バングラデシュの繊維産業で伺った話と同じように、日本市場が求める高い品質レベルに対応することが挙げられた。加えて、高額なテナント料や面倒な手続き等もあるため、日本市場への進出・展開というのは、将来的にというレベルで具体的な時期も見えていないとのことであった。
やはりバングラデシュの繊維産業から見た日本市場と同じか。日本市場が求める特異な仕様や高い品質レベルなどが世界からも世界に向けてもネックになってしまうのか。そんな風に考えていたところ、彼らとの議論の中で、日本市場の違う側面が見えてきた。それは、日本市場で流行しているデザイン等を研究し、それを取り入れているということである。
それでも重要な日本市場の動向
今、日本の人々の多くは、コートをまとい、マフラーを巻いて、通勤・通学している時期だろう。タイには日本のような寒い冬がないので、そんな光景はないと思われるかもしれないが、実は近年、11月下旬から12月あたりの時期にマフラーやセーターを着たタイの人々(特に女性)を多く見る。オフィスでは冷房をガンガンかけてマフラーを巻き、日本でも流行っているモコモコのスリッパを履いていたりする。
雨季が終わり乾季になると、35度くらいあった気温がぐっと下がるのだが、それでも日中は28度くらいあり、最低気温も20度程度といったところだ。北部は冷えるというが、それでも日本人のわたしたちにとっては、寒いという言葉が出てくるレベルではない。しかし、タイの人々は、この数週間ほどの間、冬服をファッションとして楽しむのである。これは、タイの経済が成長し、ファッションを楽しむ余裕が出てきたことの現れでもある。(ある友人の誕生パーティーで、タイ人の女性が、彼氏へのプレゼントに手編みのマフラーをプレゼントしていたのを見てわたしは驚いた)
こうしたニーズがあるため、アパレルメーカーも冬服のラインアップを備える。わたしが訪問した日は、ヨーロッパ人のモデルを起用し、セントラルワールドで行われるWinter Fashion Showの準備が進められていた。
寒い冬がないタイのアパレルメーカーは、寒い冬がある国の冬のファッションを研究し、それを参考にして冬服を作るわけだが、とりわけ、日本市場のファッション事情は彼らにとって重要な情報だ。それは、まず、タイ人と日本人の体形や肌の色が近いため、参考にしやすいからである。そして、何よりも、日本のファッションやそのセンスは、タイの人々に人気があるということだ。タイだけではない。日本のファッションやセンスは、周辺アジア諸国でも人気が高いため、それらの地域に進出・展開を考えるタイのアパレルメーカーにとって、日本市場の流行や動向というのは、極めて重要な情報なのである。
人気という点から、冬のみならず、春夏秋の日本のファッションも注目されているわけだが、タイのアパレルメーカーが日本のファッション事情を重視する理由を改めて整理すると、1.日本には冬があり冬服が存在する、2.日本人の体形がタイ人の体形や肌の色と似ており参考にしやすい、3.日本のファッションはタイのみならず周辺アジア諸国から人気がある、ということなのである。
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