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心を忘れた情報は組織を破壊する生き残れない経営(2/3 ページ)

隣席の同僚や後方座席の上司と直接言葉を交わさず、ほとんどメールでやり取りするなんて、今や常識だ。多くの職場では、もっともっと恐ろしいことが平然と起きている。

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 中堅の電気製品販社E社が、人事評価に成果主義を導入した。従業員全員に1年間の業務目標を上司と相談して作成させ、1年後に上司はその成果を当事者と確認し合って評価を決定するシステムである。しかし業務目標作成時も、最後の評価時も、ほとんどの部署で上司は部下との面談を一切しようとしない。社内のモラールは下がりっ放しだ。

 情報は、「真の情報」でなければ成り立たない。形だけの情報がまかり通っている企業は、従業員のモラールが失われる。組織が体をなさず、やがて組織が破壊される。

 真の情報であるための「条件」がある。

 まず、「心」が伴わなければ情報ではない。例えば、前掲のA事業所の人事異動の場合、異動当事者に「事実」が流れただけ、C社の場合は「事実」さえ流れない。しかも、それを流す側も受け取る側も「事実」についての経緯、解釈、思い入れ、期待などなどが度外視されている。これでは、新人事、新組織の下でスムーズな業務が遂行できるわけがない。E社の場合も、管理者は部下の心をおもんぱかることもなく効率を考えるだけ、日頃の上下関係がうまく行かないし、業務にも支障をきたすだろう。B事業所の管理データについても、いくら詳細なデータだろうが、数字や簡易表現だけを見て関係者とやり取りしたのでは、それだけのこと。数字の裏にある苦労や困難や障害、あるいは達成感など心の機微を感じながら、報告や依頼や指示を出すのとは大違い。業務の進み方に差が出る。

 「真の情報」として成り立つための2つ目の条件は、現場から「生」のままを収集しなければならないということだ。A事業所、C社、E社いずれの場合も、管理者は部下と接触していない。むしろ、接触を避けている。これでは、部下の生身の状況を把握できない。

 B事業所にしても、経営者から担当者までPC画面上の数字だけをにらんで判断するのではなく、管理データ確認のためにしばしば現場に足を運ぶ苦労をいとうべきでない。そこには、数字に表れない血の通った現実を発見できる。

 「情報の多さをもってしても、顔を合わせないことを補うことはできない。顔を合わせることは、ますます必要になる。……肌で知っていることが必要である。……信頼しあっていることが必要である。」(P.F.ドラッカー「明日を支配するもの」ダイヤモンド社)

 条件の3つ目は、自分に都合の良いことより、むしろ自分にとって都合も耳障りも「悪い」内容に関心を持つべきで、そうするとP.F.ドラッカーも指摘する内部情報に偏ることなく、「外部」情報に重きを置くこともできる。A事業所、C社、E社いずれも、経営者や管理者は相手の立場がまったく念頭にないし、B事業所の管理データもほとんどが内部データだ。彼らすべてが自分自身のこと、内部のことしか考えていない。自分以外や社外に関心を持ち、目を向けなければ、有効な情報は収集できない。

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