心を忘れた情報は組織を破壊する:生き残れない経営(3/3 ページ)
隣席の同僚や後方座席の上司と直接言葉を交わさず、ほとんどメールでやり取りするなんて、今や常識だ。多くの職場では、もっともっと恐ろしいことが平然と起きている。
問題は、「真の情報」にとって必要な条件をどのように満たすか、その方法論である。まず何よりも、トップの姿勢が大前提だ。企業人は雇われ人、トップの姿勢を常にうかがっている。トップは、「情報」には心を入れて、生の状態で収集し、しかも都合の悪い情報や外部情報に大いに関心を持つという方針を貫き、機会ある毎に示し、範を垂れ続けることだ。
まず心の入った情報について、今更古い話は退屈だろうが、昔は会社や職場行事として運動会、スポーツ大会、芸能大会、あるいは講演会、研修会、勉強会などが開催され、その行事の準備や行事そのもの、行事後の懇親会などで、無礼講の交流が行われ、上下や仲間との意思の疎通が図られたものだ。またその機会に上司宅へ押し掛けたり、仲間と飲み交わしたりして、腹を割って話ができた。そこに、情報に心がこもる下地ができた。娯楽が少なく、時間を持て余していた昔と今は比較できないが、今は自然発生的にそんな機会は生まれにくい。そういう機会が失われた今、経営者や管理者は機会を意識的に設定する努力を殊更しなければならない。それは、経営者・管理者・総務勤労部門の責務だ。
次に、PCに向かってさえいれば仕事をしている、机に座って指示を出していれば仕事をしているという風潮がある。とんでもない、PCから離れて、席を立って、社内外の現場に足を運んで、人々と言葉を交わしたり、生の現場の実態を目にしたり触ったりすると、数字だけからは見えなかった、あるいは形式的面談からは見えなかった状況が見えてくる。トップ、経営者、管理者は、合言葉のように「現場に足を運べ」と言い続けるべきだ。
さらに、社内のデータシステムに、内部情報だけでなく、外部情報も十分盛り込むようにシステム設計をすべきだ。例えば、営業の失注や顧客先の占有率減少情報などを担当部門は隠したがる。営業情報には失注した背景や、取引先の受注占有率推移なども詳細に入るようにフォーマットそのものを設計すると、隠しようがなく、外部の動きはよく判る。
情報が真の情報たるには、トップの姿勢がすべてを決める。
その上で、情報処理の仕組みに工夫をすべきだ。それが、やがて企業風土となって根付いて行く。そうすると、本物だ。
著者プロフィール
増岡直二郎(ますおか なおじろう)
日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。
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