タダ乗り経営者こそ、できることなら即刻クビにしたい:生き残れない経営(1/3 ページ)
社員でなく、経営者で「タダ乗り」を決め込む者がいるから困ったものだ。簡単にはいかないが、痛快な例もある。
社員でなく、経営者で「タダ乗り」を決め込む者がいるから困ったものだ。(頭脳)労働の提供を惜しみ、地位・報酬などの見返りだけを要求する「タダ乗り」である。経営者だから、影響大だ。本当は即刻クビにしたい。しかし、簡単にはそうは行かない。
しかし、クビにした痛快な例はある。1部上場大企業で何かと理由をつけては接待ゴルフ漬けの取締役会長が、ゴルフだけをしていればいいものを、社長を手先として完全支配下に置き、人事や重要経営案件になると口を挟んだ。眼に余る言動に、常務取締役を頭に取締役たちが結束し、会長に「社長を差し置いて、人事、経営案件には口を挟まない」ことを、直接申し出た。
会長には天変地異の出来事、飼い犬に手を咬まれた心境だったろう。あれほど強気の会長が、常務たちを前に何も言わず、翌日から出社せず、1週間後に会長退任を申し出た。常務たちの心意気や素晴らしい。彼らは、背に腹は変えられなかったのだ。
もう1例、ある日上場中堅企業で某取締役が役員から外された。彼は時間があると密かにPCゲームに興じ、業務面ではいったん言い出したら間違いを指摘されても絶対引き下がらず自説にこだわり、日頃から部下との摩擦が絶えなかった。トップは見るに見かねた。
しかし、こういう個別案件は特例中の特例で、そう簡単にクビにできるものではない。ましてや従業員から経営者を拒否するわけには行かない。では、「タダ乗り」経営者をどう扱ったらいいのか。何ともレベルの低いテーマで恐縮だし、気が滅入るが、以前「タダ乗り」社員を論じたので、もっと影響が大きくて、実際にはその数も多く、眼に余る「タダ乗り」経営者を論じておかないわけには行かない……というわけだ。
どういう「タダ乗り」経営者が、どの程度いるのか。
まず、従業員が経営者をどう見ているかを、アンケート調査から拾ってみよう。
「NPO GEWEL」の「ベンチマークサーベイ2010」(ビジネスパーソンの働く意識調査日米比較 2009.12.)によると、ビジネスマンが「会社の経営理念や経営者の考え方」に
- 「満足している」は(日本28.7%、米国61.8%)
- 「不満である」は(日32.5%、米18.5%)となっている。
日米の差が大きい上に、日本のビジネスマンは「経営理念や経営者の考え方」に、「満足」より「不満」を感じている方がはるかに大きく、30%を超える。問題である。
「第1回 経営者に関する意識調査」(中小企業新聞、’09.9.28.〜10.27.の間調査、大企業約21%・中小企業約68%・不明約11%の構成、対象20歳台〜70歳台の529人、複数回答可で下記質問に対して1000回答)によると、「社長について当てはまるイメージ」として、「ケチ」6.0%、「傲慢」5.0%、「無能」4.6%、「横暴」3.8%、「気弱」2.6%、「ウソつき」1.7% となり、合計24.7%の回答が社長にマイナスイメージを持っている。
これら従業員から見た経営者の評価は、意外と正鵠を射ている場合が多く、こういう評価を受ける経営者が、「タダ乗り」経営者の予備軍と言えよう。あるいは、そのまま「タダ乗り」をしているかもしれない。「タダ乗り」経営者を、わたしの経験から分類してみよう。
幸運無能型
上記意識調査で「無能」と決め付けられた経営者は少なくともこの分類に入る。運良く役員に登用されたが、無能というタイプだ。この数が一番多い。
運はいろいろある。たまたま時流に乗った好業績部門を統括していた(プロセスより結果重視のケース)、新製品がよく売れ、たまたまその部門を統括していた(巡り合わせが良かったケース)、トップとの個人的つながりがあった(これは、超大企業でもある)などの幸運で役員に登用され、しかし実力が伴わないという例はゴロゴロある。
例えば「巡り合わせ」で取締役に登用されたが、その後いわゆるドラッカーの「昨日を捨てて、あしたをつくる」ことができず、関係者から密かに事業悪化・縮小の「戦犯」呼ばわりをされた例、「個人的つながり」で取締役・常務と登用されたが、スタッフ部門育ちのため、製造・原価計算・営業などのライン業務に疎く、一方で部下に耳を貸す謙虚さもなく、的確な戦略・方針・指示が出せないまま管轄事業を衰退させたが、降格されなかった例など枚挙に暇がない。
こういう「タダ乗り」経営者は、「幸運」という成功体験をいつまでも引きずっているから扱いにくい。部下としては日頃マイペースで仕事を進め、たまたま役員と意見が合ったとき役員を利用する。そして、役員が去るときを待つしかない。
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