「この企業の人を採用したい」と言われる条件:ヘッドハンターの視点(1/2 ページ)
クライアントからヘッドハンティング依頼を頂く際、一通り話を聞いた後、「『是非この企業の人を採用したい』という企業はありますか?」と質問します。
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クライアントからヘッドハンティングを依頼される際、一通り話を聞いた後、「『是非この企業の人を採用したい』という企業はありますか?」と質問します。そこで名前の挙がってくる企業は社員がお客様やパートナー企業からの評判がいいことはもちろんですが、卒業生が転職先でも大活躍している企業です。
「卒業生が転職先でも大活躍している企業」というのには、いくつかの意味があります。新しい環境でも活躍できる柔軟性があり、適応能力が高く、また「大活躍」と言う意味では周りを刺激して巻き込んで変革を起こせる人がいるということです。そういう資質を持った人材を新卒含めて採用しているということもありますが、仕事上での経験によって培われたものも大きいと思います。ただ、企業によって「卒業」の旬な時期は異なります。
外資系大手IT企業A社は、競合他社への転職に制限をかける契約(Non-Compete Agreement: NCA)を一定レベル以上に昇進する際の条件としていました。(NCAを結ぶ企業は少なくありませんが、職業選択の自由がある限り、転職先を100%制限することはほぼ不可能です。実際NCAにサインしていても、さまざまな方法で競合他社に転職している人は日本にもたくさんいます。)A社は転職後に活躍している人が多いことで有名ですが、その大多数は30代前半まで(NCAを結ぶ前)に転職した人達で、役員や社長で招かれることはほとんどありません。転職市場においてA社の人材で魅力的とされているのは(一部の例外を除けば)30代前半までです。実際A社の役員クラスがヘッドハントされた話はほとんど聞きません。
数年前までは、別の外資系大手IT企業B社は競合他社への転職も含めて社員の転職には大らかに対応していました。B社では若いうちから地方や海外勤務など多様な経験が出来ることもあって、転職のピークはやや遅く30代後半から40代半ばくらいでした。そしてB社は新しいチャレンジを求めて転職していく社員に対し「お互いIT業界の発展のためにがんばろう!」と、快く送り出すだけでなく、競合する部分ではお互いに切磋琢磨し、協業できる部分では信頼できるビジネスパートナーとして良好な関係を築いていました。採用側は、質の高い教育を受けて、スキルを磨き実績を積んできた人を迎えられるだけでなく、企業同士の良好な関係を迅速に築くことが出来るため、B社出身者を好んで採用していました。以前は欧米のIT企業が日本進出する際、ヘッドハンターを通さずに、本社CEOが「近々日本に進出するので、御社から誰かいい人をうちの日本支社長として採用させてくれませんか?」と、直接B社日本法人に依頼することも珍しくありませんでした。こうして、外資系IT企業の日本法人社長はB社出身者だらけという構図が業界内で出来上がりました。
ところが、数年前からB社でもNCAを強化し、転職に対して非常に厳しい態度をとるようになり、そのことはあっという間に転職市場に知れ渡りました。
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