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「この企業の人を採用したい」と言われる条件ヘッドハンターの視点(2/2 ページ)

クライアントからヘッドハンティング依頼を頂く際、一通り話を聞いた後、「『是非この企業の人を採用したい』という企業はありますか?」と質問します。

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 それまで「『是非この企業の人を採用したい』という企業はありますか?」という質問に対してつねにB社の名前があがっていましたが、ここ数年は「B社から直接採用するのは時間もかかるし、B社との関係が面倒なことになるのは嫌だから……」という意見が大半を占めるようになりました。業界によって多少異なりますが、IT業界の場合、75%採用要件を満たしている来月入社できるCさんと、95%採用要件を満たしているけれど(NCAの関係で)半年後まで入社できないDさんがいたら、ほぼ迷わず来月入社できるCさんを採用します。半年も経つと業界の状況も採用要件も変わっている可能性が高いし、今すぐ実施することに意味のある戦略・計画を持っているケースが多いのです。(成熟した業界では時間をかけてベストな人を採用するという傾向があるので、半年待ってでもDさんを採用するかもしれません。)

 実際、ここ数年はB社役員クラスの人が積極的に転職活動をしても、市場環境の厳しさ以上に苦戦しているという話をよく聞くようになりました。B社に対する転職市場の考え方がすっかり変わってしまったのです。

 このことは短期的にはB社の思惑通りですが、中長期的にはB社に大きなダメージを与えていると思います。継続的な企業規模の拡大、社員数の増加が見込めなければ、上に行くほどポジションは少なくなります。にもかかわらず、個人のスキルとは別のことで転職市場での人気がなくなり、行き場が失われます。そうすると、社内にとどまるという選択肢しかなくなるので保身に走り、しがみつきます。ということは、優秀な若手がいてもポジションがなく上にあがることが出来ず、外に出るか疲弊していきます。強制的に縛り付けても自由を求める人々のパワーを抑え込むことができないのは歴史や、はるか彼方の国や、K-POPアイドルを見ていても明らかです。

 「卒業生が転職先でも大活躍している企業」を言い換えれば「転職しても大活躍できるすごい社員がたくさんいる企業」です。せっかく育てた優秀な社員を、負けを恐れて守りの施策ばかり打つことで"残念な人"にしてしまうのはいかがなものかと思うのは、ヘッドハンターだけなのでしょうか。

著者プロフィール

岩本香織(いわもと かおり)

G&S Global Advisors Inc. 副社長

USの大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。東京事務所初の女性マネージャー。米国ならびにフィリピンでの駐在を含む8年間に、大手日系・外資系企業のビジネス/ITコンサルティングプロジェクトを担当。 1994年コーン・フェリー(KFI)入社、1998年外資系ソフトウェアベンダーを経て、1999年KFI復帰、テクノロジーチーム日本代表。2002年〜2006年テクノロジーチームAsia/Pacific代表兼務。2010年8月KFI退職。2010年9月より現職。


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