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50代社員の実像50代ミドルを輝かせるキャリア開発支援(2/3 ページ)

あの頃自分は輝いていた……再スタートを促すキャリアショック

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ライフラインチャートが意味するもの……あの頃自分は輝いていた

 筆者の会社では企業や団体に対して、社員のキャリア形成研修を提供している。最近増えているのが50代社員を対象にしたキャリアデザイン研修だ。研修ワークの中に「ライフラインチャート演習」がある。図表1参照。このワークは自分の人生や職業上の満足度を年代に沿って一本の線で表してみるというものだ。

 このチャートで特徴的なことがある。それは、この満足度が20代はやや低く、30代から上昇し始め、大半の方のチャートの満足度のピークが30代後半、もしくは40代半ばであることだ。それは現在から見ると10〜15年以上前である。満足度のピークは先ほどの肩書きや組織ポジションによる自己の輝き感と一致する。研修で盛り上がるのもこのチャートの振返りだ。あの頃自分は輝いていた……その時期の活躍や苦労話には熱が入る。

 またこのチャートと合せ、その頃仕事で培ったスキルや能力も記してもらっている。自己の経験・能力の強みを分析すると、ほとんどの方がこの満足度のピーク時期の体験から多くのことを学び、後のキャリアを形成する土台を作り出している。自己の自信となる強みがあることは何より心強い。

 ここで一つの課題が浮かび上がる。それは、多くの50代社員にとって「ピークは過去」という自己意識を持っていることだ。50代の仕事満足度は現在にはなく、また、自己の強みとするスキルや能力は10年以上前に獲得されたものが中心である。輝きも実績による組織貢献の感覚も多くが過去のものである。経営環境が悪化し、ミドル・シニア層にシビアな成果が問われる昨今、果たしてその能力や経験の強みは現実の仕事を遂行する上で、いかほどの自信と実効性を持っているかが問われるだろう。

 IT等の技術革新が仕事のやり方を変え、組織改革が進むなかで、50代社員には自己の強みもまた環境に応じて補強や再学習することが求められよう。そして自己の立場が移り変わるこの時期に大切な能力として、自己を上手く組織の中で生かす組織適合能力の習得と高度なヒューマンスキルの発揮が不可欠となる。いまの現実的な環境に適合するために、「過去のキャリア資産」から得られる強みを自覚するとともに、不要なものを捨てて、新たな自分を生み出す。つまりキャリアカウンセリングで言う『経験代謝』が大切であろう。


図表1:50代後半社員の代表的ライフラインチャート

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