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世の経営者・管理者よ、分かるかなあ?“自問と自省のすすめ”を生き残れない経営(1/4 ページ)

最大手エレクトロニクス企業の1つA社の一事業部門を統括するB専務取締役は、「反省をしろ、反省のないやつは進歩がない」が口癖だった。

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 最大手エレクトロニクス企業の1つA社の一事業部門を統括するB専務取締役は、「反省をしろ、反省のないやつは進歩がない」が口癖だった。大企業の専務が頻繁に口にするには、ちょっと疑問符をつけたくなるような些細ともいえそうな指針、あるいは方針だが、「反省の哲学」ともいうべき考え方を学び、知るにつけ、その言わんとすることの奥の深さや重要性が分かってくる。

 ハーバード・ビジネススクール教授ロバート・スティーブン・キャプランは、「誰でも社会人になりたての頃は、先輩たちからあれこれ指導を受けたり、後押しされたりする。誰かにたえず見守られ、コーチングやメンタリングを受ける。しかし昇進していくにつれて、忌憚のないアドバイスをしてくれる人は減っていき、ある時点を過ぎると、何事もおのれの裁量で処理しなければならない。」「仕事から一歩離れ、重要な問いに答える時間を設けることで、自分のパフォーマンスを改善し、深刻なビジネス上の問題が生じるのを未然に防げるのだ。」として、「自問と自省のすすめ」を提唱している(「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」2010.2.)。十分傾聴に値する内容だ。

 わたしたちは、なぜ反省をしない傾向にあるのか。その理由はいくつか考えられるが、それがそのまま反省をしないタイプの分類にも使われそうだ。

 (1)単なる怠慢から反省をしない(次は何とかなると思う。「反省をしたつもり」の通り一遍の浅い反省も、同様と考えられる)

 (2)すべて自分は正しいと思い込む(ほどのバカ。その結果、とにかく他人の言うことを受け付けないという拒絶反応として現れる)

 (3)自尊心・自意識が過剰で、自分の正否に無関係に自分の非を認めない(他の軍門に下ることを潔しとしない。場合によっては、自分にとって都合の悪い結果を隠そうとする)

 (4)仮に自分の非を認めても、他の人のせいにする

 (5)上へ盲従する(反省が不要)

 こう考えてくると、周囲にこういうタイプをウヨウヨ見掛ける。その結果、ビジネス上の問題が解決されず、ますます深刻化することになる。キャプランは、これに警告を発する。 キャプランは、リーダーたちが定期的に自問自答すべき7つの質問を提唱する。下記の7つの質問は、筆者が多少アレンジしている。

 (1)どれくらいの頻度でビジョンを伝え、何がビジョンで優先課題かを部下は答えられるか

 経営現場での実態は、毎日毎日経営指標の維持・好転だけに関心がある。それが悪いわけではない。それがすべてであるところが、問題なのだ。受注を上げろ、受注の未達成の穴を埋めろ、赤字を出すな、赤字を消せ、不良を出すな、不良を減らせ。あたかもそれらがビジョンと化し、それらが何にも優先する。これが、現実だろう。

 しかし、何がビジョンで、企業はどこに向かっているか、環境の変化に伴い部下は何を期待されているか、優先的に取り組むテーマは何か、などが分からなければ、部下たちはついてこられない。時間にも効率にもツケが廻り、権限委譲もままならず、リーダーは仕事を抱え込むことになる。だから、自問自答すべきなのだ。

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