3つのフェーズで企業に浸透するスマート端末:iPadで躍動する職場(1/2 ページ)
発売以来、相次いで企業での導入が紹介されるなど、いよいよビジネスシーンにおいても本格的な普及期に差し掛かったiPad。企業がその利用を推し進める上で、注意すべき点は何か。
企業でも高まるiPhone/iPadの利用機運
iPhoneやiPadに代表されるスマートフォンやタブレット端末など、スマートデバイスの企業における利用がここにきて加速している。2010年に入りiPhoneの導入事例が次々と登場し、iPadに至っては2010年5月の発売直後から大企業を中心に採用を表明する企業が相次いだ。
一般に企業は新ツールの導入に慎重になりがちだ。にもかかわらず、iPhoneやiPadの導入に意欲的な背景には、技術革新によるセキュリティレベルと運用レベルの向上がある――。こう分析するのは、企業向けiPhoneアプリの開発やWebサイトの制作などを手掛けるジェナの手塚康夫社長だ。
手塚氏によると、企業がiPhoneに関心を寄せるきっかけとなったのは、2009年にリリースされたiPhone 3G/3GSに新OSの「iOS3」が採用されたことである。これにより、スマートフォンとしてグローバルで普及している加Research In Motionの「BlackBerry」と同等のセキュリティレベルを実現することが可能となった。
従来からモバイルPCのセキュリティを確保するため、ネットワークやアプリケーション、デバイスのそれぞれのレベルで対策が講じられてきた。iOS3によってそのためのセキュリティ基盤が整えられたわけである。実際に、iOS3のリリース以降、電子メールのデータを安全に送信することなどを目的とした各種ソフトウェアの開発に、さまざまなベンダー企業が取り組むという好循環が生まれている。
MDMでスマートデバイスの管理を効率化
加えて、MDM(Mobile Device Management)により、スマートデバイスの管理業務を効率化できることが認知され始めたことも大きいと手塚氏。MDMによって、スマートデバイスと社内ITシステムとの認証や接続、グループウェアとの同期、個人プロファイル(デスクトップやお気に入り機能など)の管理、外部サービスとの接続などを統合的に行うことが可能になる。MDMはiOSでは公開されており、端末の機能制限などを設定ファイルによって容易に行うことができる。
「企業はiPhone 3G/3GSの登場から約半年かけ、セキュリティと運用管理の双方から現場での利用に耐え得るかを検証し、実用性が確認できたことを踏まえ、まずは現場レベルでの導入に舵を切った。現に、当社に寄せられる引き合いも同様に推移している。また、iPhoneで業務における検証を終えていたからこそ、同じOSを採用したiPadの採用を、リリース直後であっても決断できた。でなければ、セキュリティに極めて厳しい金融機関などで導入が進むとは考えにくい」(手塚氏)
一方で、企業の情報漏えい対策もスマートデバイスの普及の追い風になっているようだ。ノートPCの紛失による情報漏えいは、企業にとって長年の懸案事項の1つだった。ただし、スマートデバイスであればノートPCほど機能が豊富ではなく、機能制限によって持ち運ぶデータを制限でき、「より安全な環境を提供できる」(手塚氏)ことが注目されているのだという。
外出先で必要とされる機能操作は、多くの場合、メールのやりとりや情報の簡単な修正などに限られる。コスト削減の観点でも、ノートPCから機能が限定されたスマートデバイスに置き換えることによるメリットは決して小さくないのである。
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