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職人やNPOが大企業と共通する事業の力とはビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

「身の丈」の経営という、新しい時代の働き方を選んだ人たちがいる。自由、自分らしさ、名誉、やり甲斐を自分の手でつかんだその働き方とは。

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勤めないとは


『勤めないという生き方』

 昨夏から暮れにかけ、「勤めない」人たちを取材した。

 勤めないというと、無職のように聞こえそうだが、そうではない。勤めていた会社を辞めて自営や法人で独立したり、もとより就職はせずに起業したり、という人たちだ。それでも若干、補足が必要かもしれない。

 筆者が取材したのは、かつて多くいたような「いずれはIPO」といった右肩上がりの、がむしゃら系ではない。個人事業であったり、NPOや法人だったり、と事業形態はさまざまだが、基本的にはスモールビジネスというべき状態の人たちだ。その取材対象を選ぶにあたっていくつか基準としていたことがある。

 個人であれ法人であれ、自身の売りどころを理解し、「身の丈」の経営を基軸とする人。イメージとしては、米国のコラムニスト、ダニエル・ピンクが提唱した「フリーエージェント」のような存在だ。

 同書では、新しい時代の働き方を選んだ人たちをこう記している。

大半のフリーエージェントにとって、必ずしも「大きいことはいいこと」ではない。自分にとっていいことこそ、いいことなのだ。出世や金など「共通サイズの服」の基準で成功を目指す時代はもう終わった。自由、自分らしさ、名誉、やり甲斐など、「自分サイズの服」の基準で成功を目指す時代になったのだ。

(『フリーエージェント社会の到来』(ダイヤモンド社)より引用)


 要は、自分の好きなこと、関心の深いことを仕事にした人たちのことだ。

 そんな人たちの話に耳を傾けるべく、「地域」「職人」「NPO」「お店」「農業」と領域を絞り、北海道から沖縄まで足を伸ばした。

 会った人たちは計13名。いずれもユニークなキャラクターとキャリアをもった人たちだったが、その中には優良企業出身者も少なくなかった。

 現在、北海道黒松内町で農業とエコショップ「リトルトリー」を営む宮川哲治さんは、元住友建設(現三井住友建設)の社員だった。だが、キャンプ場など自然を生かした仕事を求め、退職。環境市民団体の職員などを経て、現在の仕事に就いた。

 一風変わった不動産の紹介で人気のサイト「東京R不動産」のディレクター、馬場正尊さんは元博報堂。大学院博士課程の休職中に都市とメディアを考える季刊誌「A」(休刊)の編集長に就任し、その後会社をやめて自身の会社を設立。リノベーション事業に取り組むなかで「東京R不動産」を立ち上げた。

 京都大学大学院からトヨタ自動車に就職した阿部裕志さんがいま手がけているのは、島根県隠岐の島、海士町の地域支援事業だ。トヨタが営業利益で2兆円という好調な時期に同社をやめ、生まれも育ちも縁のない離島に移り住んだのは、その島に惚れ込んだのに加え、島が抱える問題が日本全体とも通底していると考えたためだ。彼は仲間と「巡の環」という会社を営んでいる。

 東京大学医学部を出てワコールに就職するも、仕事中に出会った草木染めに心を奪われてしまったのは青木正明さんだ。いくつかの事業では統括的なポジションに付いていたものの会社を飛び出し、修行ののち、「手染メ屋」という手染め衣類のオンラインショップをもつに至った。

 一部の人を紹介すると、こんな具合だ。

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