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今こそリーダーシップの発揮を!誤解していませんか? マネジメントとリーダーシップの違いを生き残れない経営(1/2 ページ)

閉塞状態の日本経済を大震災が襲って、日本経済がますます深刻さを増すこの逆境の時こそ、国家も企業もトップや幹部に真のリーダーシップが求められているのだ。

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 閉塞状態の日本経済を大震災が襲って、日本経済がますます深刻さを増すこの逆境の時こそ、国家も企業もトップや幹部に真のリーダーシップが求められているのだ。

 ところで、世の経営者と管理者は、マネジメントとリーダーシップを正しく区別できるだろうか。あるいは、その違いを意識して日頃の業務に当たっているだろうか。実態は、そうでない者が多過ぎるような気がする。

 企業経営を常識的に定義する「経営目的を達成するために、経営環境に適応しながら、人心を掌握し、組織を動員して、経営資源を最大限に効率的・効果的に活用すること」のうち、全体がマネジメントで、人心掌握・組織動員がリーダーシップだと、何となく漠と捉えてはいまいか。そのため、人心を掌握できない、組織を動かせない、あるいは予算達成への障害を除去できないマネージャーを「リーダーシップがない」と決めつけたり、それができるマネージャーを全面的に容認したりしがちだ。

 中堅日用品メーカーA社は、ある時期たまたま時流に乗った新製品で業績が好調だった。時のトップは、本社オフィスを拡張したり、工場や地方事業所を増改築したり、美術品や調度品を購入・新調したり、福利厚生施設を充実したりした。社内の士気は、当然上がった。当時、そのトップは社内外からマネジメント力やリーダーシップをたたえられたものだ。しかし、後年A社は競合メーカーに攻められ、市場も飽和状態に陥り、次の手を打たなかったツケが廻って来て、業績は悪化の一途をたどり始めた。好業績の時にはトップを持ち上げていた取り巻きも、負け戦になると戦犯呼ばわりした。時すでに遅し、だ。トップ本人も、周辺も、マネジメントやリーダーシップを正確に理解していなかったわけだ。

 家電メーカーB社の家電小物品が、一般家庭で発煙事故を起こした。B社は、その発煙事故を当初重要視しなかった。しかし、その後当該製品が発火事故を起こし、消防自動車が出動する事態に至った。ところが、そのとき台所の壁を多少焦がした程度で、事故発生も辺ぴな地方だったので、B社はやはり問題を重要視せず、むしろ消火に当たった消防署やマスコミに対して、事故そのもののもみ消しに走った。そんな姑息な対処の仕方は成功するはずもなく、事故を隠しおおせるものでもない。後日容易に表面化し、事故関係者たちが一網打尽に処罰されることになるが、B社々内では口づてに該当部門のトップの「リーダーシップ」の欠如が批判された。この場合も、リーダーシップが正しく理解されていない。

 事ほどさように企業の現場では、予算達成ばかりが終始念頭にあり、業績悪化や品質事故があると上を下への大騒ぎをするトップや経営者・管理者ばかりが横行している。まして、非常事態が発生したときのうろたえようは尋常ではない。

 何故か。彼らの多くは多少の波風はあったものの、社内の安定した事業を担当しながら駆け上がってきたという成功体験を持っているため、その枠にはまった手法を駆使していればよしとし、急激な変化や未知の事態に遭遇したときの対処の仕方を身につけていない。

 環境の急激な変化への対応、新規事業への挑戦ができず、企業変革など考えたこともない。彼らが、マネジメントもリーダーシップも正しく効果的に発揮できるわけがない。

 マネジメントとリーダーシップは、明らかに違う。ジョン・P・コッターとアブラハム・ザレズニック(いずれもハーバード・ビジネススクール名誉教授)が、その違いを明確に定義している(「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」2010.2.)。

 コッターは、リーダーシップを「変革を起こすこと」と考え、組織を動かすあらゆる階層のマネージャーに要求される能力であるとする。「あらゆる階層のマネージャー」というところが、1つの重要なポイントでもある。

 コッターによる企業におけるリーダーシップとマネジメントの解釈を、多少筆者の手を加えて下記に比較表示する(上掲書)。

 精神分析家でもあるザレズニックの、マネージャーとリーダーが全く違う人種であるとする考えも参考になる(上掲書、下記は筆者が多少アレンジ)。

 これらのことから、企業としても今だからこそ、この逆境の中で複雑に絡み合った問題を解決するために、真のリーダーシップが求められていることが分かるだろう。

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