日本のブルーオーシャンはどこにある――早稲田大学、池上重輔准教授(1/2 ページ)
ブルーオーシャンは発見するものではない
早稲田大学 大学院商学研究科・早稲田ビジネススクール 准教授 池上重輔氏によれば、プルーオーシャン戦略はこれまで誤解を受け続けてきたと語る。
「まず、ブルーオーシャンは発見したり、偶然見つかるようなものではなく、企業自らが創造するものです。そしてブルーオーシャンは、コストを押し下げながら、買い手にとってのバリューを向上させるというバリューイノベーションを実現させている市場です」
限られた時間内ですべてを説明するのは困難で、インタラクティブ・ミーティングの中では概要をざっと説明するだけ、と断りを入れた池上氏だが、氏が共著で上梓した「日本のブルー・オーシャン戦略」(ファーストプレス)にはこれまで誤解されることの多かったブルーオーシャン戦略について具体的に説明がなされているという。
ブルーオーシャンを理解する上で対義語であるレッドオーシャンについても知っておく必要があると池上氏は話す。レッドオーシャンはまさしく激しいコスト競争が展開され、しかも顧客に対する付加価値を高める努力が同時に行われているという「しんどい」(池上氏)市場だ。しんどい市場でのみ戦い続けるのは非常に辛いこと。しかし多くの日本企業はその中で勝利を収めてきた。
「日本企業はオペレーションエクセレンスでこの戦いに勝ち続けてきました。つまり現場力ですね。しかし世界で現場力のみを頼りに戦い続けるのはいささか困難になってきました。アジアの新興国を中心にオペレーションエクセレンスを身に付けた企業が増えてきたからです」と池上氏は語る。
任天堂Wiiのブルーオーシャン戦略
アジア新興国が高い現場力を身につけて市場に登場してきたとき、日本企業はどういう戦略を取ったのかといえば、高い付加価値を製品、サービスに取り込むというものだった。高い技術力をもって付加価値の高い製品を作れば価格が多少高くとも売れるはず。しかし現実にはそれほど、世界の市場で成功したとはいえなかった。
池上氏は語る。「高い付加価値が買い手にとってのバリューになっているのかどうかが問題。製品を売る側が勝手に『こんな機能をつければ喜ばれるだろう』と考えても買い手がそれをバリューと感じなければ意味がない。プルーオーシャン戦略では、買い手にとってのバリューとは何かをさまざまなツールやメソッドを使って徹底的に明らかにしていきます」
しかし「コストを押し下げながら、買い手にとってのバリューを向上させる」などということは可能なのか。バリューを高めるとコストも高くなるのではないか。池上氏はブルーオーシャンを理解する上で、この疑問を解くことが大きな鍵になると話す。そして事例として任天堂のゲーム機Wiiを挙げて説明する。
「ゲーム市場は競争の激しい市場です。しかも、ゲーム人口は減少傾向にあります。Wiiが開発された当時は高い技術力を利用して高精細な動画でゲームを楽しめることがユーザーを増やす戦略として考えられていました。まさに高付加価値戦略ですね。ところが任天堂は独自の調査で、そうした戦略の方向性では新しいユーザーは獲得できないと考えたのです」
Wiiは普段子供がゲームをしているのを好ましく思っていない親世代やテレビゲームなどやろう思ったこともない中高年世代をユーザーにし、価格も当時高機能を誇っていたライバル社のものよりも低めに設定し、一気に市場を制圧したのである。
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