日本のブルーオーシャンはどこにある――早稲田大学、池上重輔准教授(2/2 ページ)
早稲田大学 IT戦略研究所主催 第34回 インタラクティブ・ミーティング(後援 アイティメディア)のテーマは「ニュービジネス創造の勘所」。早稲田大学 大学院商学研究科・早稲田ビジネススクール 准教授 池上重輔氏は日本のブルーオーシャン戦略について語った。
10年以上優位性を保つために
Wiiはすべて安価な技術で作られたものではない。利用する技術のメリハリがきいているのだと池上氏はいう。
「Wiiのテニスやゴルフのゲームをするときに使うスティックに仕込まれている3軸加速度センサーなどは、開発当時まだ完成された技術ではなかった。そうした技術にはコストを掛けるかわりに削れるものを徹底的に削って製品開発を行ったのです」
Wiiの楽しいところは、自分が動かした腕や手の感触を非常にリアルに画面上で動きとして捉えることができるところだ。このバリューは買い手にとって驚きであり、感動を呼ぶものであり、ゲームというものの概念を変えてしまうものだった。
家庭用ゲーム機はゲームセンターに据え置かれて使われていたいわゆるアーケードゲーム機に近づくという方向性で進化を遂げてきた。家庭のゲーム機で実際の映像と間違えるほど精細なカーレースを楽しめるというのは、その進化の道筋を踏襲するものだ。しかしそのためにゲーム機の価格は高騰してしまった。まさに従来型の高付加価値戦略である。それにひきかえ、Wiiの戦略は市場の現実、買い手の本音を上手にすくい上げたものだ。任天堂はWiiによって新しい市場を創造したのだといえるだろう。
では、任天堂と同じようなことが他の企業でできるだろうか。
「日本にもブルーオーシャン戦略で成功した企業はほかにもたくさんあります。優れたブルーオーシャン戦略は安易な模倣者の追随を許しません。10年以上優位性を保つことができるのです。企業はレッドオーシャンで激しい競争の中に身を置いていても、一方でブルーオーシャンの創造に力を注ぐ努力が必要です」
確かにWiiの模倣者は今のところ出てきていない。今後はゲーム機市場の様相は変化していくだろうが、任天堂がWiiで築いた優位性はそう簡単には崩れないだろう。ブルーオーシャン戦略は製造業だけでなく、サービス業にも応用できると池上氏は話す。市場戦略の転換期を迎えている日本の企業にとって大きな力となるに違いない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 知的興奮がビジネスの出発点――ヴィレッジヴァンガード成功要因を探る
『ニュービジネス創造の勘所』をテーマに銘打った、エグゼクティブリーダーズフォーラム主催、第34回インタラクティブ・ミーティングに、株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーション代表取締役会長、菊地敬一氏が登壇。ユニークな品ぞろえで多くの消費者の心を捉える同社の経営戦略を語った。 - 先駆者から学べ――「中国進出 最強のプロフェッショナル50人」
「世界の工場」から「世界のマーケット」に変貌を遂げた中国。市場参入による成功のチャンスがあふれている一方で、リスクも極めて高い。日本企業はどう戦っていくべきだろうか。 - 変革のエンジンとなるプロジェクトチームの作り方――シグマクシス、倉重会長
第18回 ITmedia エグゼクティブセミナーでは「社員こそ競争優位の源泉 ワークスタイル変革で新たな価値創造を」というタイトルのもと、さまざまなスピーカーが熱弁をふるった。基調講演ではシグマクシス会長の倉重英樹氏が、企業に競争力とイノベーションをもたらすワークスタイル変革について持論を展開し注目を集めた。 - 「iPadの優れた表現力はプレゼンで強力な武器に」――ネットイヤーグループ 石黒CEO
モビリティに優れたタブレット端末は、現場を駆け回るビジネスマンのみならず、企業の経営者にとっても有益な道具だ。彼らはiPadをどうとらえているのか。Webマーケティング業務などを支援するネットイヤーグループで代表取締役社長 兼 CEOを務める石黒不二代氏に聞いた。