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日本とグローバルではITにおける注力分野に違いがあるが、その本質は何か?Gartner Column(2/3 ページ)

前回は、CIOサーベイ2011のグローバルベースの結果で話をしました。今回は、国内のCIOの回答をグローバルと比べながら、特徴的な面を見ていきたいと思います。

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グローバルと日本との違い

 逆にグローバルでは第3位の「ITコストを削減する」が、日本では第7位にランキングされました。日本でもITコスト削減策に頭を悩まされている人が多いとは思いますが、グローバルの平均値と比べると、優先順位がやや下がったように見えます。しかし、それでも全体から見れば上位にランキングされていますから、その重要性は理解できます。

 また、日本の第5位にランキングされている「ビジネス部門/IT部門間のリレーションシップを改善または構築する」は、グローバルでは第10位にランキングされています。実は、この結果こそ、グローバルと日本との違いが出ていると感じています。この項目に注力したいと考えるCIOを取り巻く環境は、「ITの価値をどのように証明すれば良いだろうか?」とか、「経営やビジネス部門からの要求は、量・質ともにITの要員数や能力を上回るものばかりでとても追い付けない」などの声が聞こえていると思います。

 逆にユーザーサイドからは、「うちのITは、ビジネス成長の足かせになっているのではないか?すぐに、あれもできない、これもできないって言うじゃないか」とか「いまは、仕事が混み合っていて、こちらに人が回せませんって言うよね」などの声が聞こえてきたりするはずです。グローバルで第10位なのは、この項目について随分と前から継続的に取組みを行ってきたからだと考えられます。

 日本のCIOやITエグゼクティブには、プロジェクトを上手く遂行させることや、技術的な側面では一家言ある人が多いのですが、経営トップやビジネス・エグゼクティブたちと上手く立ち回ることには、意外と物静かになってしまったりします。「経営トップやビジネス・エグゼクティブといかに上手く連携して、ビジネスの成果を出すことに注力するかが、CIOとしての中心的な役割だ」と話すCIOが、グローバルでは少なくありません。

 実は、今年のCIOサーベイでは、このことに起因すると考えられる結果が出ています。図1を見てください。このグラフは、CIOが立案したIT戦略とビジネス戦略がどの程度関連しているかをCIO自身が評価したものです。グローバルでは、81%のCIOが「密に関連している」と回答しましたが、日本は68%しかありませんでした。読者の皆さんは、「13%くらいの差で大騒ぎするなよ」と言うかもしれません。8割超と7割弱という言い方の方がはっきりするでしょうか。わたしには、とても有意な差に見えてなりません。この結果をダメ押しするような結果もあります。


図1(出典:ガートナー 2011年3月)

 図2を見てください。これは、「CIOである貴職の成功にとって最も重要な要因を選択してください。」という問に対する回答を集計したものです。グローバルでは、ビジネス成果とビジネス知識と回答した合計が66%に上り、ITの価値はビジネスの結果に現れることを理解しビジネス上のベネフィットを追及していかなければCIOとしての成功はあり得ないと考えていることが分かります。一方で日本は46%で、過半数を割っています。しかも、グローバルでは第2位のビジネス知識が、日本では第3位であり、第2位は小数点以下での差とは言え「CEOをはじめとする経営幹部とのリレーションシップ」がランキングされました。

 確かに、CIOとしての成功を判断するのはCEOをはじめとする経営幹部たちであり、そこと懇ろにしておくことは成功につながるのかもしれません。グローバルでも14%もあるわけですし、決して日本だけの傾向でもないようです。もっとも、「CEOをはじめとする経営幹部とリレーションシップを密接にして、経営から見て分かりやすいITを構築しているのだ」という言い分もあるでしょう。

 では、数字こそ小さいですが、「CIOとしての職務権限」が日本で6%となり、海外で2%という数字の差はどう見ますか。「そもそも、CIOとして成功するためには、俺にオフィサーとしての権限をよこせ!」「CIOとして成功しているわたしには、確固たる権限があるからだ」という主張が、グローバルの3倍もあるということなのです。これも、とらえ方によって主張が異なりますが、小さい数字とは言えわたしには看過できない結果に見えるのです。CIOとしての権限が先なのか、誰にも分かる「ビジネス成果」を見せるこが先なのか。皆さんは、どちらだと思いますか。


図2(出典:ガートナー 2011年3月)

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