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日本とグローバルではITにおける注力分野に違いがあるが、その本質は何か?Gartner Column(3/3 ページ)

前回は、CIOサーベイ2011のグローバルベースの結果で話をしました。今回は、国内のCIOの回答をグローバルと比べながら、特徴的な面を見ていきたいと思います。

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ITによるビジネス成長の貢献度

 ちなみに、わたしのところによく寄せられる質問の1つとして、この「ビジネス成果」があります。「ITによるビジネス成長の貢献度を正しく測定する方法はないか?」というものです。ちょっと分かりにくいので、この質問の意味を簡単に説明しますと、例えば「一昨年末と昨年末とでは売上が3割上昇したのだが、情報システム更改により貢献したのは、このうちどの程度だと主張するのが正しいか?」というものです。

 景気動向も影響しているでしょうし、製品・サービスの向上もあったでしょう、もちろん、営業サイドでの努力・貢献もあったでしょう。それでも、情報システムの貢献分を正確に測定する方法を知りたいというのがこの問い合わせの趣旨です。「情報システムの影響分だけを正確に測定する方法はない」というのが正しい回答です。ちょっと考えていただくとよいのですが、売上が上がったこと自体は、企業にとって良いことなのでしょうが、営業部、開発部、企画部、システム部などで、この手柄を取り合っているという構図になっていると思いませんか。社内で手柄の取り合いをしていることが、それこそ企業ガバナンス上、正しいのでしょうか。

 経営トップは、「全社一丸となって」という御旗の下、企業成長のために奔走します。全社一丸となって得られた結果を更に部門で取り合うことに精力を費やして意味があるのでしょうか。もっと簡単に言うと、情報システム更改の際に、想定される目標があったはずですが、この目標に対してどの程度の達成度合いだったのでしょうか。その達成度合いを明示するだけでも十分ではないでしょうか。「そうは言っても、目標は、エイヤッ!て決めたからねぇ」という声がちょくちょく聞こえてきたりもします。

 プロジェクトの前段では、フィージビリティ・スタディを通じて業務分析をして、何がどのように改善・変化するのか、どのくらい業務にインパクトがあるのかを明確にして目標設定を行うことというのは、当たり前のことなのですが。

 今回は、日本のCIOとグローバルのCIOとをCIOサーベイの結果から見て比較し、日本特有の問題点を指摘しました。しかし、欧米的な考え方が常に正しいと言っているつもりはありません。日本には日本固有の文化・風土があり、そして欧米よりも優れたポイントはいくつもあると思います。しかしながら、このCIOサーベイの結果をみて、自身のマネジメントと比べてください。見落としていたポイントや、自身を補足するポイントなどが見えてくることが往々にしてあるよううです。

著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー

小西一有

2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。


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