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50代社員の活用・活性化の実践的取り組みの視点と提言50代ミドルを輝かせるキャリア開発支援(3/4 ページ)

企業として取組むキャリア開発計画の視点や現場の推進力となる支援人材の必要性について考えてみたい。

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50代社員には誰がどのように向き合うか=キャリアサポート推進人材としてのキャリアアドバイザー活用

 では、キャリアの分岐や役職定年前後の50代社員に対して、現実には誰がどのように向き合えば良いのだろうか。必要なことは、対象者に対し事前のキャリアデザイン研修や個人面談で、新しい職場での心構えや働き方のルールやマナーを自覚させ、初期の職場適応を円滑にすること、そして受け容れる職場の上司には、人材管理上の知識やノウハウの習得を図ることだろう。

 配置された人材が意図どおりに組織に適応し、活躍し、成果があがれば問題はない。しかし、現実にはそううまく行くわけではない。年長の元上司は年若い管理者の指示や指導に戸惑うこともあれば、力量を試すなどのけん制行動に出る人もいる。また、管理者が年長社員を扱うことに不慣れで、不用意にプライドを傷つけたりすることもあり、お互いに不信感を抱えている。これに加えて、中堅や若手社員による仕事やコミュニケーションのいさかいが生まれると、“不機嫌な職場”ができ上がる。

 このような事態を予防しうまく切り抜けるには、個人と組織管理者双方に対し、その問題を解決・調整する役割を担う担当者が求められている。第三者の専門家として客観的立場で、双方の問題点を聴き、解決に向けた指導や助言を行う人材だ。これが職場の中でうまく機能すれば、個人間のコミュニケーションは円滑に行なわれ、無用なあつれきやしこりを残さなくて済む。企業内でこの役割を担っている代表的な資格者はCDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)と呼ばれる人たちだ。

 企業内では、CDAはキャリア相談室付きになっている人もいれば、現場組織の中で資格者として、キャリアアドバイザーとして活躍している人もいる。その業務は、単なる職業相談にとどまらない。新入社員から定年退職者まで、キャリアサポートを必要とする人や組織に対し、その問題の程度に応じ、キャリアカウンセリングや人材活用の助言などを行う。また一方、必要に応じ所定の役割を得て、管理者や人事部、経営陣に対し、組織的対処や改善の提案など組織に対する働きかけも行う。CDAは人事機能を円滑に推進するキャリアコンサルタントの役割も担っている。

 雇用・就業環境が大きく変化する中で、50代社員のみならず、個人のキャリア課題と人事諸制度との運用を円滑に進め、キャリアの橋渡しをする上で、キャリアアドバイザーのサポートを活用すべき時代が来たと痛感している。このような専門人材の養成と配置を、多くの企業で展開されることを願うばかりだ。

「人生のスコアボード」にはどんな得点が記されているか=ライフキャリアを考える視点

 50代のキャリアを考える上で、付け加えたい視点がある。それは「キャリア=仕事人生」と、「ライフ=個人」の人生の関係だ。50代・60代は、今までの「仕事人生の充実を優先する考え方」から、「人生そのものの充実を優先する考え方」へと優先順位をシフトする人も多い。

 前稿で紹介した、神戸大学の金井壽宏氏の論考に、「人生のスコアボード」(※注2)と題する小論がある。仕事で業績をあげることと、自分の人生の目標や価値観を目指した生き方・働き方ができたかどうか、両者の意味を考えさせる論稿だ。

 わたしたちは長い職業人生を毎年、予算や目標の達成とその評価に一喜一憂しながら、10年、20年、30年と過ごしていく。仕事のスコアボードには、成果が生まれ評価されれば得点が入る。失敗や不調が続けば評価は下がり得点は零点かマイナス点。

 もう1つが人生のスコアボードだ。人生のそれぞれの時期を振返って、自分らしく、幸せに充実した生き方、働き方ができたかどうかで、得点を入れてみる。このスコアボードは、自分が重視する生き方が実現できたかどうかで決まる得点だ。

 このスコアボードは、1つのイメージだが、ハッと気づくものがある。仕事の得点は、人生の幸せとなるのだろうか、その後の幸せを約束するのだろうか。50代になると、会社と家庭それぞれに人生の季節に応じた責任や役割が生まれる。自分がよく見える年になってくるにつれ、それまでの仕事優先、肩書きや収入を重視した競争的な働き方が、徐々に変化する。

 仕事人生・家庭生活・自分の人生が等しい価値に見えてくる日がくる。それぞれの役割をどこまで納得して引き受け、自分として責任を果たしきれたか、自分を生かしきれたか、が人生の幸福度を左右する。50代社員のキャリア支援は、仕事と人生双方のバランスのとれた幸福感、ライフキャリアも視野に入れた支援を考える必要がある。

 ※注2:「中年力マネジメント」金井壽宏著〔創元社2001年〕

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