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SEのコミュニケーション能力向上がITを「武器」に変える〜その4エグゼクティブのための人財育成塾(2/3 ページ)

東日本大震災は、日本に大きな傷跡を残した。福島原発の問題も抱えながらの復興は容易ではない。しかし、この大惨事を日本の再生の契機にしようという力強い取り組みも始まっている。「スマートジャパン」への脱皮、そこでは言うまでもなくITを「武器」として活用することが求められる。このような変革を実現するためには、IT企業、そしてSEの付加価値の高い「提案力」が不可欠である。震災からの復興、失われた20年からの再起、そこで求められるSEの提案力を磨くためのポイントはどこにあるのだろうか?

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現場SEは業務を理解するための「勇気」を持て

 システムの設計・構築・運用という場面で現場SEに求められる「提案力」とは、どのようなものでしょうか? 言うまでもなく、作ろうとしている、あるいは現在運用しているシステムをより良いものにするための工夫です。インフラに近い部分はITの専門知識をプロフェッショナルとしていかに駆使するかということになるので、ここでは「お客さま」つまりユーザー部門との議論が必要な、アプリケーション寄りの話をします。

 ユーザーにとってより良いシステムとは、業務の効率・効果を上げるシステムです。そのようなシステムを提案するためには、現場の「業務を徹底的に理解する」ことが基本となります。この「業務を理解する」というのはちょっとくせもので、この言葉を「現場のユーザーが言う事を正しく理解すること」と勘違いしている現場SEが多いように思われます。

 その結果、何が起こっているかと言うと、先述したように「御用聞き」に終わってしまっている事が多いように思います。「業務を理解する」とは、なぜその業務を行っているのか、そしてなぜ今のやり方でやっているのかを理解することです。この理解を得るためには、業務改善の基本である「なぜ、なぜ5回」を実践するしかありません。しかし、この実践も簡単ではありません。

 これは、日本の教育制度にも多分に問題があると思うのですが、IT関係者に関わらず日本人は言われた事をとにかくメモし、それをその通り覚える、あるいは実行する習慣があるように思います。また、周囲の人が「これは当たり前」と言わんばかりの顔をしている時に、基本的な事を質問するのを躊躇する傾向があるように思います。

 現場SEには、このような習慣を打ち破って「こんなことも知らないのか」と思われる事があっても質問をする「勇気」がなければいけません。ユーザーが気持よく話をしてくれるような質問のテクニックなどの基本スキルも当然身につける必要がありますが、まずはどんな事でも自分が納得するまで質問する「勇気」を持つことが必要です。この力は、自分達のミッションを明確にすること、そして上司によるレビューを徹底して行うことで磨くことができると思います。

 まず自分たちのミッションですが、これは言うまでもなくITのプロとしてベストなシステムを作り運用することです。これを実行するために必要な事はどんな事でも行うという基本姿勢を、普段から繰り返し伝えることで浸透させなければいけません。この基本姿勢を実務面で浸透させるためには、現場SEがユーザーとの議論で行うべき質問を上司がレビューでSEに対して行って内容を確認する手法が有効です。

 「ユーザーは、何のためにこの業務を行っているのか? 」、「なぜ、今のやり方でこの業務を行っているのか? 」、「そこでは何が課題になっているのか? 」といった内容をレビューで確認し、把握できていない事を明確にしてユーザーに聞けるようにする。このような活動を継続的に行っていく必要があります。

 今回のテーマである「提案力」の観点からは、現場SEにはもう1つ大事なポイントがあります。それは、「自分事」としてユーザーの話を聞き、改善案を考えることです。上記の「現場理解」が当然ベースとなるわけですが、改善案を考えるに際しては、自分がユーザーとして業務を行うとしたらITはどうあって欲しいか、どうなっていたら現在の課題を解決できるかという観点を持つことが重要です。他人事としてではなく、「自分事」として考えることでより良い案が出せる機会も増え、「現場業務理解」も深まります。

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