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菅首相の大罪藤田正美の「まるごとオブザーバー」(1/2 ページ)

菅首相はよく自民党に対して「歴史への反逆」という言い方で攻撃していた。しかし今、歴史に大きな汚点を残そうとしているのは、菅首相その人自身である。

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 それにしても菅首相の厚顔ぶりはどうだろう。自民党などが提出した内閣不信任案に党内から同調する動きが出るや、「復旧・復興に一定のメドがついたら……若い人に責任を持ってもらいたい」と言って、退陣をほのめかした。もちろん本来ならこれだけでは退陣表明にはなるまいが、鳩山前首相が「6月末、遅れても7月初め」に首相が辞任すると発言したことで「退陣表明」と受け取られたのである。

 ところがこのところ、菅首相は異様にハイになっている。6月16日に開かれた、再生可能エネルギー促進法案成立を目指す集会で「本当に私の顔を見たくないのですか」と3回も繰り返し、この法案を成立させることが政治家としての使命だとも言い切った。大型となる2次補正の編成をメドと言った鳩山氏をあざ笑うかのように、小規模な1.5次補正の編成を指示し、国民新党の亀井代表などは支持基盤の強化のための内閣改造まで提案した(もっともこれは本気で提案したのか、やろうとしてもできないということを認識させるために提案したのか、解釈はいろいろあるかもしれない)。

 菅首相はよく自民党に対して「歴史への反逆」という言い方で攻撃していた。民主党政権の予算に協力しないということは、日本の将来を人質にすることであり、歴史への反逆だと主張したのである。しかし今、歴史に大きな汚点を残そうとしているのは、菅首相その人自身である。

 菅首相の真意が何であったにせよ、外国も含めて多くの人が「辞任表明」と受け取った発言。一国の指導者がそこまで表明したのに、首相の座にしがみついて、矢継ぎ早に法案を出していくなどということがあってよいはずはない。沖縄の普天間基地移設問題はまったく方向性が見えない(アメリカにしても煮え湯を飲まされた鳩山首相に続いて、菅首相を信じていいのかどうか迷っているに違いない)。外交関係とりわけ対中関係は難しい局面にさしかかっている。中国が南シナ海を「核心的利益」と呼び、それに向けて着々と行動しているからだ。日本はこのことに対してまったく存在感がなく(南シナ海は日本にとっても核心的利益であるのに)、アメリカはそうした日本にいらだっている。

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