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菅首相の大罪藤田正美の「まるごとオブザーバー」(2/2 ページ)

菅首相はよく自民党に対して「歴史への反逆」という言い方で攻撃していた。しかし今、歴史に大きな汚点を残そうとしているのは、菅首相その人自身である。

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改革はどのように実行されるのか

 国内的にも税制と社会保障の一体改革がどのように実行されるのかが大きな問題だ。一応、政府・与党の成案は6月20日にも決定される方向にあるが、このまま消費税を引き上げるといっても、実際には説得力がない。なぜなら、社会保障費は黙っていても毎年1兆円を超えるスピードで増えていく。消費税を2017年に10%にしてもその増収効果は10兆円ほどで、40兆円ほどを国債発行で賄うような予算を支えきれない。大幅な歳出カットを伴わなければ、国と地方を合わせて1000兆円を超える借金を減らすことなど不可能だ。

 いまいちばん必要なのは、1000兆円をどう減らしていくのかのロードマップをつくることだ。それも絵に描いた餅ではなく、国民的議論を経た工程表である。そのために首相の強いリーダーシップとビジョンがいる。それこそ歴史に耐えうるような指導者が必要なのである。いったん辞任を表明し、国民を欺き。民主党議員を「騙し討ち」にしたようなリーダーでこなせるはずがない。それは歴史をひもとけばすぐにでも分かることだ。

 菅首相がずるずると政権の座にしがみつき、機を見て「脱原発」を問うて衆議院解散に踏み切るのではないという見方もある。あたかも小泉元首相の「郵政解散」のような話だが、去年のエネルギー基本計画をまとめたのは民主党政権だ。それを「白紙にして脱原発」というのは結構だが、そのためには自然エネルギーで安定供給ができる体制をどうやってつくるのか、そこまではどうするのか、現在の原発をどのように廃止していくのか、具体的で明確なロードマップが絶対に必要である。なぜなら「脱原発」というイデオロギーで国民を煽ることは、リスクから目を背け、基本政策を誤ることになるからだ。

 菅首相がこれ以上居座り続け、民主党幹部がこれ以上何もできないのなら、自民党も民主党も割って、それこそ政界大再編を行うべきだと思う。鳩山前首相は戦後の首相の中で最も日本の国益を損なった首相だと思っていたが、菅首相はどうやらそれを上回る最悪の首相となっている。退陣への花道などとのんきなことを言っている場合ではない。普天間のように二進も三進も行かなくなる前に、国のリーダーを総入れ替えしなければならない。

著者プロフィール

藤田正美(ふじた まさよし)

『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。


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