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○○○○な数字で評価することが、日本の組織をダメにしている――前篇Gartner Column(2/3 ページ)

安易な戦略目標設定こそが、戦略を台無しにし、有効性の高いビジネス・プロセス構築を難しくしている。ビジネスの方向性が明確になっているか、ビジネスの方向性に基づいて戦略目標が定まっているか、戦略目標を達成するための経営リソースが明確になっているか検証する必要がある。

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戦略目標は多ければいいというものではない

 今回、BPM&SOA サミットでは、この戦略目標は、1〜2つ程度にしてくださいと言いました。サミット終了後、お客様からの質問は、「財務目標ではなく、1〜2つの戦略目標とのことでしたが、なぜ1〜2つでなければならないのか? 」でした。例えば、戦略目標を7つ掲げたとしましょう。結果的に7つのうち4つが達成されて3つが達成できなかった場合、当初予測していた財務数値が達成されるでしょうか。恐らく達成は難しいのではないでしょうか。

 そして、経営者は戦略立案者としてこう言い訳をするでしょう。「戦略目標を7つ掲げたが4つしか達成できなかった。そのため財務数値も目標を下回ってしまった。」と。目標は、可能な限り少なく、ビジネス戦略の方向性を端的に説明できるものにしなければなりません。言い換えると、目標を達成したら、どうなるのか? が皆に正しく伝わることが必要なのです。何をしたいのかを経営者が戦略目標という道具立てで従業員に示すのです。この戦略目標がたくさん有り過ぎると、何を目指しているのかが分からなくなってしまうのです。 ちなみに、先の半導体メーカーは、コスト削減というのをあえて戦略目標にしませんでした。しかし、新しいビジネス・プロセスを構築し稼働してみると、何と数十億円規模でコストが削減できたと言います。売上が数千億円の企業ですから、オペレーションコストが1%以上下がった訳です。このような事例は、この企業だけでなく、多くの企業から「結果的にコスト削減はできましたよ。」とうれしい話を聞きます。

 さて、話をビジネス・プロセスに戻し存在の意味を説明しましょう。ビジネス・プロセスは、ビジネス戦略の目標を達成するために存在しているということを良く理解してください。(図1)ビジネス・プロセスの改善・改革を実行するためには、ビジネス戦略の目標が、戦略の方向性に沿って合理的に定まっていなければならないのです。これは、卵と鶏の関係ではありません。明らかに戦略目標が定まってから、ビジネス・プロセスの設計・構築が行われます。 日本の企業がつまずく原因はここにもあります。ビジネス・プロセスの設計・構築を誰が行うか? です。まれにビジネス・プロセス改革本部なる部署が存在しますが、往々にしてビジネス・プロセスの意味が不明瞭だったり、ビジネス戦略の戦略目標にはノータッチだったりして、まともに計画が立てられません。そして、実際にビジネス・プロセスを改善・改革しようとしても、各部門に対する指揮・指導権が無かったりして、「絵に描いた餅」となってしまうことも少なくありません。


図1 出典:ガートナー

 欧米では、ビジネス・プロセスの改革をCIO(最高情報責任者)が主導して成果をあげてきたと報告されることが多いですが、日本ではどうでしょうか。(図2)ガートナーCIOサーベイの結果によると、実は欧米各国よりも、日本の方が、CIOがビジネス・プロセスの責任者として任命されていることが多いことが分かります。「頑張れ!日本のCIO!」心からエールを送ります。

 ビジネス・プロセス改善・改革の責任者が実行すべき最大の責務が、ビジネス・プロセス全体で達成すべき戦略目標を各部門にブレークダウンして、各部門で達成すべき目標として割り振ることです。ビジネス・プロセス全体を見通すことは、各部門ではとても難しいです。正直、他の関連部門が何をしようとしているのか、正式に知る術もなく、知っている必要もないからです。

 さて、各部門で達成すべき目標値を割り振ったら、あとは、これが達成されているかどうかを測定することが必要になります。この測定結果を集計して、戦略目標の達成度の進捗を経営者に報告する必要があります。ここで活躍するのが、「情報システム」という訳です。


図2 出典:ガートナー

 情報システムは、ビジネス・プロセスを実装し、各部門で達成すべき目標値を測定するための道具です。そして、情報システムが測定した目標値の達成度合いを見ながら、ビジネス・プロセスの微調整を行ったり、目標の持ち方についての微調整を行ったりする訳です(図3)。


図3 出典:ガートナー

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