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○○○○な数字で評価することが、日本の組織をダメにしている――前篇Gartner Column(3/3 ページ)

安易な戦略目標設定こそが、戦略を台無しにし、有効性の高いビジネス・プロセス構築を難しくしている。ビジネスの方向性が明確になっているか、ビジネスの方向性に基づいて戦略目標が定まっているか、戦略目標を達成するための経営リソースが明確になっているか検証する必要がある。

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目標値以外のものを測定するのはやめる

 今回のBPM&SOA サミットでは、こんなことを話しました。「この目標値以外のものを測定するのはやめましょう。」と。これも、講演後に質問がありました。「当社では、プロセスの可視化のために情報システムで採取できる全ての情報を測定し、可能な限り経営者に見せています。正直、どんな情報が必要かは分からないと言うのです。だから、何もかも全部見せることにしたのです。なのに、先ほどの講演では、目標値以外は測定しないと言いましたね。それで可視化はできるのでしょうか? 経営者が他のものを見たいとは言わないのでしょうか。」と。なかなか良い質問です。

 この質問こそ、今回の題名にある○○○○に入る言葉に関連してきます。わたしたちは、人間です。読者の皆さんも人間です。そして、おおむね企業に所属する会社員で、上司が存在します。わたしたちは、人間であり、会社員であるが故に、上司に褒められたい。可能ならば、叱られてばかりいるよりも、ほめられたい。上司が見ているわたしの業績は、上司が怒り出す前に「良い結果」にしておきたいと思っているはずです。違いますか?

 つまり、測定されてしまうと、その測定値が気になって気になって仕方ない。そして、「良い結果」を出したくなる。全部が「良い結果」にするのが難しいならば、「悪くない数字」にお化粧したくなりませんか。測定値がたくさんあればあるほど、先ほどの話にも繋がりますが、何をしていいのか分からなくなってしまいます。

 最悪なのは、経営者が従業員に本当にして欲しいことがおろそかになり、どうでも良い、測定できるから測定していただけの数値に固執する従業員が出てきたりすることになります。(何でも良いから)プロセスを可視化するというのは、経営者が何をしたいのか分からないから言い出す言葉であり、可能な限りの可視化をしたければ経営者が自ら現場に行き、エンドツーエンドのお客様から多くの苦情を聞くことで実現できます。わたしの米国在住の上司も、来日した時に、日本人クライアントの皆さんにこう言います。「ゲンバ ニ イケ」と。

 今回の表題の○○○○には何が入るか分かりましたね。「いろいろな数字で評価することが、日本の組織をダメにしている」が正解です。次回は○○○○の中に何が入るでしょうか。

著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー

小西一有

2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム (EXP)」の日本の責任者を務める。


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