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「BCPは“使える”内容であることが望ましい」――大和総研、鈴木孝一専務ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)

「非常時にしか役に立たない上に費用がかかる」といった評価をされがちだったBCP(事業継続計画)。しかし、上手な導入・活用で日頃から使えるBCPを実現している企業もある。どのような方法なら役に立つのか。

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“高価なお守り”ではなく、日頃から使えるBCP、いざというときにも実際に使えるBCPに

 BCPは、システムの中に組み込まれているだけでなく、実際の利用シーンにも組み込まれている。例えばシンクライアントとペーパーレス化は事務の効率化に繋がり、広域災害やパンデミックなどの際にも役立つ。しかも、終業時間後にはシンクラサーバのリソースが空くので、近年では顧客を集めてオンライントレード講習会などにも活用しているという。

 また、非常時に特別な回線でデータセンターにアクセスすることが可能な端末が各店舗に備えられ、非常時に使うものとして「BCP」と記した透明ビニルのカバーで覆われているが、システムの監査の際に使ったり、作業量が多いときに臨時に増員したスタッフが使うこともあるという。このように、災害時にのみ役立つ投資ではなく、平常時から役立つような設計のBCPが、随所にみられる。

 「企業にとって、BCPの有無は災害時の死活問題だが、“高価なお守り”というイメージがつきもの。しかし、お守りだからといって使わなくて良いのか。コンサルティング会社を入れても使えるBCPにはならない。ユーザーが自ら何を目指すのかを明確にしてストーリーを作り、各社の事情に合わせたアレンジを行い、BCPを使えるものにしていく必要がある」(鈴木氏)

 ユーザーが日頃から使って慣れ親しんでおくことで、いざというときにもBCPを“使える”。そして情報システム部門も、非常時に備えた訓練が必要だ。鈴木氏は、データセンターを移転する機会もBCPの訓練を兼ねたものとしたという。

 「新たなバックアップサイトとして選定したデータセンターが、当時のメインのデータセンターより優れていたので、バックアップサイトとして考えていたデータセンターをメインとすることにした。その際の移設作業は、BCPの訓練にもなった。実際に体験することは非常に重要だ。また、その移設作業をきっかけにシステムの棚卸しを行い、インフラのスリム化を進めた」(鈴木氏)

 バックアップのデータセンターは、メインのデータセンターと同時に常時稼働している。現在では社内クラウド化が進められており、今後5年以内に全てインターナルクラウドに移行を完了する見通しとのことで、全てのサーバシステムがバックアップセンターでも稼働できるようになる。さらに、新日鉄ソリューションズ、パナソニック電工インフォメーションシステムズと提携し、各社のクラウド仕様を共通化し相互にインフラを利用し合える関係を構築した。

 1社だけではコスト的に厳しくても、提携し合うことでコストを抑えつつ実際に役立つ環境を作ることができるというわけだ。また、クラウド化を進めると同時に、OSS(オープンソースソフトウェア)を積極的に活用、できるだけベンダーに依存しない環境を作り上げてきている。特定ベンダーに依存する環境では、災害時にベンダーの対応を待たねばならない場面が生じてくる。しかし広域災害では、ベンダーが必ずしも自社を優先してくれるとは限らない。鈴木氏は、そういった想定まで行っているという。

 「きちんと役に立ち、コストも相応というBCPを目指してきた。それと同時に、災害は自分たちの都合の良いときに起きるとは限らない。“今災害が起きたらどうするのか”を常に念頭に置きながら、さまざまな想定を行いできるところはどんどん実践していくことが重要だ」(鈴木氏)

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