ITmedia エグゼクティブセミナーリポート
乗客の動きをとらえ、地域経済を活性化した西日本鉄道(1/2 ページ)
nimocaを武器にグループ企業のシナジー効果を最大化
ほころびを見せつつある20世紀型のビジネスモデル。そこから脱却を図る上で無視できない存在となっているのが、日々、生み出される多様かつ膨大なデータである。技術革新によりデータを生成するツールが飛躍的に増加する中、データ活用の基盤を整えることができれば、従来では思いつかなかった側面から顧客やビジネスを創造するための“気づき”を得られる可能性が飛躍的に高まることはもはや周知の通りである。
福岡に本社を構える西日本鉄道は、その実現に取り組む企業の1つである。1908年に創業し、連結で約3200億円もの売り上げを誇る同社は、鉄道事業に加え、バス事業や航空貨物事業、商業施設の運営、旅行代理店業など幅広くビジネスを展開。そんな同社が2008年から利用者の利便性の向上に加え、地域経済の活性化を目的に運用を開始したのが交通系ICカードの「nimoca」である。
西日本鉄道のICカード事業部で課長を務める奥村洋介氏は、「当社のグループ企業は約80社を数え、創業以来、消費者に必要とされるサービスをほぼ網羅する形で事業の裾野を拡大させてきた。ただし、従来は消費者の行動を把握する手立てが乏しく、グループとしてのシナジー効果を十分に発揮できていなかった。この状況を打破するためのものこそがnimocaなのだ」と同社にとってのnimocaの意義を説明する。奥村氏には経営サイドからnimocaによって得られた情報を基にした新サービスの商用化が強く求められていることからも、同社にとってのnimocaの重要性がうかがえよう。
ポイントで会員登録を促す仕組み
既に述べた通り、nimocaはJR東日本の「Suica」などと同様の交通系ICカードである。nimocaの種類はいくつかあるが、誰でも購入でき会員登録が不要なnimocaと、会員登録が必要な「スターnimoca」、提携クレジット会社と契約することで、クレジットカードとしても利用できる「クレジットnimoca」が代表的なものである。それらの累計発行枚数は144万枚。福岡県民約505万人の3.5人に1人が所有する計算だ。
nimocaの大きな特徴の1つが利用時に決済額に応じてポイントが付与される点である。しかも、西日本鉄道が運行する電車やバスの利用時のみならず、スターnimocaではnimoca加盟店での決済時、さらにクレジットnimocaではクレジット決済時にも電車、バス、買物に使える共通ポイントが付与される。そのメリットが高く評価され、購入時にはスターnimocaでは会員登録が、クレジットnimocaでは提携クレジット会社への申し込みが必要とされるものの、両者の発行枚数はそれぞれ63万枚と5万枚で、nimocaの累計発行枚数の4割以上に占めるほどだ。
「nimocaはポイントカードの仕組みも取り入れ、利用者が電子マネー以外の現金やクレジットで支払った際でも、電車・バス・お買物に使えるオープンな共通ポイントが付くようサービスを設計した。会員登録する利用者が多いのも、まさにこの点が評価されたからこそ。その結果、性別や年齢、住所といった貴重な会員の属性データを多数、収集することに成功した」(奥村氏)
なお、nimocaは2009年よりSuicaなどとの相互利用を実現。2010年12月には大分地域まで利用できるエリアを拡大した。こうした利便性の向上への地道な取り組みも、nimocaの利用拡大の追い風となっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「その100時間は、何も生み出していない」――認知科学者・堀田創氏が斬るリーダーの"見えない疲れ"
-
2
富士通、新方式の量子コンピューター試作機を世界初開発 ダイヤモンドで計算精度を向上
-
3
「気難しい年配者」にも好かれる社員が持つ3つの条件とは
-
4
フジテレビが「アドレッサブル広告」開発 商用化に向け技術実証加速
-
5
デジタル化へ突き進む日清食品、データ活用、内製化、会社の枠を超えた次なる挑戦を直撃――日清食品HD 情報企画部 次長 成田敏博氏
-
6
猛暑は恐怖で吹き飛ばす
-
7
問屋街から「アートの街」へ
-
8
グローバル時代に勝ち残る理想のホテルを作りたい――横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズを「変革」する鈴木朗之社長
-
9
戦略を実行する第2ステップ―組織の成功循環モデルを知り、リーダーシップを強化する
-
10
第1回:到来した「自律型AI時代」
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー