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乗客の動きをとらえ、地域経済を活性化した西日本鉄道ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

このたび開催された「第17回 ITmediaエグゼクティブフォーラム」の基調講演に登壇した西日本鉄道 ICカード事業部の奥村洋介課長は、同社の交通系ICカード「nimoca」を活用したさまざまな取り組みを解説した。

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nimocaを武器にグループ企業のシナジー効果を最大化

 ほころびを見せつつある20世紀型のビジネスモデル。そこから脱却を図る上で無視できない存在となっているのが、日々、生み出される多様かつ膨大なデータである。技術革新によりデータを生成するツールが飛躍的に増加する中、データ活用の基盤を整えることができれば、従来では思いつかなかった側面から顧客やビジネスを創造するための“気づき”を得られる可能性が飛躍的に高まることはもはや周知の通りである。

西日本鉄道 ICカード事業部の奥村洋介課長
西日本鉄道 ICカード事業部の奥村洋介課長

 福岡に本社を構える西日本鉄道は、その実現に取り組む企業の1つである。1908年に創業し、連結で約3200億円もの売り上げを誇る同社は、鉄道事業に加え、バス事業や航空貨物事業、商業施設の運営、旅行代理店業など幅広くビジネスを展開。そんな同社が2008年から利用者の利便性の向上に加え、地域経済の活性化を目的に運用を開始したのが交通系ICカードの「nimoca」である。

 西日本鉄道のICカード事業部で課長を務める奥村洋介氏は、「当社のグループ企業は約80社を数え、創業以来、消費者に必要とされるサービスをほぼ網羅する形で事業の裾野を拡大させてきた。ただし、従来は消費者の行動を把握する手立てが乏しく、グループとしてのシナジー効果を十分に発揮できていなかった。この状況を打破するためのものこそがnimocaなのだ」と同社にとってのnimocaの意義を説明する。奥村氏には経営サイドからnimocaによって得られた情報を基にした新サービスの商用化が強く求められていることからも、同社にとってのnimocaの重要性がうかがえよう。

ポイントで会員登録を促す仕組み

 既に述べた通り、nimocaはJR東日本の「Suica」などと同様の交通系ICカードである。nimocaの種類はいくつかあるが、誰でも購入でき会員登録が不要なnimocaと、会員登録が必要な「スターnimoca」、提携クレジット会社と契約することで、クレジットカードとしても利用できる「クレジットnimoca」が代表的なものである。それらの累計発行枚数は144万枚。福岡県民約505万人の3.5人に1人が所有する計算だ。

 nimocaの大きな特徴の1つが利用時に決済額に応じてポイントが付与される点である。しかも、西日本鉄道が運行する電車やバスの利用時のみならず、スターnimocaではnimoca加盟店での決済時、さらにクレジットnimocaではクレジット決済時にも電車、バス、買物に使える共通ポイントが付与される。そのメリットが高く評価され、購入時にはスターnimocaでは会員登録が、クレジットnimocaでは提携クレジット会社への申し込みが必要とされるものの、両者の発行枚数はそれぞれ63万枚と5万枚で、nimocaの累計発行枚数の4割以上に占めるほどだ。

「nimocaはポイントカードの仕組みも取り入れ、利用者が電子マネー以外の現金やクレジットで支払った際でも、電車・バス・お買物に使えるオープンな共通ポイントが付くようサービスを設計した。会員登録する利用者が多いのも、まさにこの点が評価されたからこそ。その結果、性別や年齢、住所といった貴重な会員の属性データを多数、収集することに成功した」(奥村氏)

 なお、nimocaは2009年よりSuicaなどとの相互利用を実現。2010年12月には大分地域まで利用できるエリアを拡大した。こうした利便性の向上への地道な取り組みも、nimocaの利用拡大の追い風となっている。

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