【第1回】“チームワーク後進国”になってしまった日本:チームワーク 2.0(1/2 ページ)
本連載は「チームワーク」をテーマに、新しい組織マネジメントの仕組みとその可能性を検討していきます。
本連載は、「チームワーク」をテーマに取り上げます。変化の激しい経営環境おける、新しい組織マネジメントの仕組みとその可能性を読者の皆さんと考えていきます。
新しいチームワークとは何か
チームワークといえば、日本の伝統的な強みであり、いまさら見直すまでもないという読者も少なくないでしょう。農耕民族であった日本人にとって、みんなで協力して働くことは伝統的な習慣であり、日本でチームワークという言葉が、集団で何かをすることそのものを指していて、かなり広い意味で用いられるのもそのためではないでしょうか。日本企業のこれまでの成長に、日本的チームワークが貢献してきたことは明らかです。
一橋大学の守島基博教授は、わが国では、チーム制や自主管理は、特に工場などの現場労働者を対象として、1960年代から行われてきて、かなりの成功を収めてきたといいます。しかし、企業の競争環境がこれまでと大きく異なった今、知識労働者の専門性を基盤とした新しい形のチームワークが求められており、さらにこのような組織形態は、既に全世界的なデファクト・スタンダードとしての組織プラットフォームになっていると述べています。
この新しいチームワークとはどのようなものでしょう。一言でいうと、「異なる専門性を持ったチームメンバーが、相互に関係しながら仕事し、チームが自律的に目的を達成する」ことになります。ここでのキーワードは、「異なる専門性」と「チームの自律性」です。新しいチームワークと、これまでの伝統的な日本のチームワークは、この2つの点で異なります。
前者は、日本的なチームが同質的・集団主義的なものであるのに対し、新しいチームは、異質性・多様性を持つメンバーが1つのことを成し遂げるために協力します。後者は、日本的なチームは現場に近いところにあり、自律性はかなり制限されています。一方、新しいチームではその裁量が大きく与えられます。例えば、世界で最もイノベーティブな会社といわれる米国のデザインコンサルティング会社・IDEOでは、チーム自体がメンバーを選択する裁量を持っています。ここでは、チームリーダーになる人が、そのチームの目的や必要な専門性をプレゼンテーションし、それを聞いた社員が、自ら参加するチームを選択するという方法で、チームが編成されます。まるで、ハリウッドの映画制作のようです。
ここで、組織とチームの位置付けを、図1を使って整理します。まず組織について、企業では一般的に、その専門性に応じて組織が作られています。また、その責任範囲に対応する縦の階層があります。本部−部−課といったものです。こうした機能別の組織には合理性があります。専門知識ごとに人を集約することで、その蓄積や伝承が効率的にできるからです。
次にチームです。日本的なチームは、組織の末端にあります。図でいうと「チーム1」です。それに対して、「チーム2」のように、新しいチームは異なる組織から必要なメンバーが集まります。このように、新しいチームにおいても、機能別組織とは、共存できるわけです。「こんなチームなら既にウチにもあるぞ」と感じる読者もいるかもしれません。ところが、機能別組織とチームの共存こそが、時として新しいチームワークに問題をもたらす背景となることがあります。これを防ぐために、経営者やマネジャー、そして担当者が、チームワークの理解を深め、スキルを身に付ける必要があるわけです。
この新しいチームによる仕事の進め方を、本稿では「チームワーク 2.0」と呼ぶことにします。
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