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【最終回】ファシリテーター型リーダーの「巻き込み力」〜その7エグゼクティブのための人財育成塾(1/3 ページ)

ビジネスの目的を達成するためには、社内だけでなく社外の関係者も含めていかに「巻き込む」ことができるかが事の成否を左右する。ファシリテーター型リーダーは2の矢3の矢の打ち手を用意して、プロジェクトに臨む必要がある。

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 豊かな生活社の島田編集長は、電子書籍事業に参入する最初のステップとして、月刊誌「楽しい科学」や書籍「楽しい実験シリーズ」などのコンテンツを生かした学習塾A社との協業に取り組むこととなった。しかし、学習塾A社の企画開発室室長の伊藤氏からは海外ビジネスの検討もスコープに加えたいという更に高いハードルも要求された。他社との協業による新しいビジネスへの取り組みを具体的に始めるスタートラインの目前にまで来た島田編集長は、このような状況でリーダーとして何を考え、どのような行動をとるべきであろうか?ファシリテーター型リーダーの「巻き込み力」 〜その6

 島田編集長は、高杉社長にこれまでの検討経緯を説明し、プロジェクトの目標、スコープの再設定を行うためにミーティングを行った。事前に高橋部長が高杉社長に学習塾A社との話を伝えておいてくれたため、議論は比較的スムーズに進んだ。学習塾A社との協業プロジェクトを行う上で、高杉社長が出した条件は以下の3点であった。

 (1)豊かな生活社にとって、海外でのビジネス展開の検討まで一気にスコープに含めるのは、ハードルが高すぎる。海外展開を視野に入れた議論を行うことは構わないが、具体的なビジネスの検討は国内でのビジネスを作った後の次フェーズとすること。

 (2)学習塾A社との検討で作られる学習塾向けコンテンツなどを、豊かな生活社として横展開できるものにすること。

 (3)今回のプロジェクトで作る電子書籍向けのアプリケーションやサイトなどを、豊かな生活社の他のコンテンツの電子書籍事業に活用可能なものとすること。

 2、3に関しては、著作権などの契約上の難しい問題も含むが、基本的にコンテンツを含めて電子書籍を豊かな生活社が開発して提供することでクリアできると思われる。しかし、1に関してはプロジェクトのスコープの問題なので、学習塾A社の野原社長と合意をとっておく必要がある。そこで、島田編集長は両社の目的および取り組み姿勢をすり合わせるために、両社トップを交えたミーティングのセットアップを伊藤室長に依頼した。

 両社のミーティングでは、スコープのすり合わせが主な議論となった。学習塾A社としては、今後の成長戦略を検討する上では海外展開はスコープから外せないものの、豊かな生活との協業では最初のステップとして国内での展開をターゲットとして取り組むことに野原社長も合意した。但し、海外展開を常に意識してコンテンツなどを作成して欲しいと言う要望が出された。高杉社長もこの要望には合意した上で、以下の点に関して両社で確認してプロジェクトをスタートさせることになった。

 ・プロジェクトのオーナーは野原社長、高杉社長の両名とし、進捗確認も含めて月1回の定例会議を行う。

 ・実務窓口は伊藤室長と島田編集長とし、進捗会議を週1回実施して双方食い違いのないようにプロジェクトを進める。

 ・最初のターゲットは学習塾A社の来年1学期(4〜7月)に間に合うようにコンテンツを提供する。

 ・費用などに関しては、内容が具体化した段階で豊かな生活社が見積を出し、双方で負担を協議する。

 島田編集長は、学習塾A社との共同プロジェクトに関して編集部会議で報告し、全編集長からの協力合意を取り付けることができた。いよいよ具体的な取り組みが始まることになる。しかし、プロジェクトの目的もスコープも、検討当初からはかなり異なったものとなっている。このような状況下で、プロジェクトを成功させるために島田編集長はリーダーとしてどのようなことを考え、どのような行動をとるべきであろうか?

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