待ちの姿勢ではない球団経営を 横浜DeNAベイスターズ・池田社長:2012年 それぞれの「スタート」(2/3 ページ)
日本のプロ野球界において、7年ぶりに新球団が誕生した。経営面でその舵取りをする横浜DeNAベイスターズの池田純社長が語る未来図とは――。
企業経営という意識をより強くしたい
――昨年12月に球団社長就任後、DeNAベイスターズという球団に関して特に課題に感じた面はありますか。
池田 企業経営としての観点を強化すればより良い球団に進化することが可能だと考えています。例えば、コストに対する感覚です。一企業としてDeNAベイスターズを見た場合、赤字企業という状況にあるため、本来であれば不必要な経費に敏感になり、どのように効率的に運営していけばいいかをトコトン考えるべきであるにもかかわらず、コストや経営に対して職員一人一人の意識がそこまで強い状態ではないと感じています。そこで、その意識を高めようと、最適なコスト、適切な考え方のプロセスを、接する職員一人一人と刷り合わせています。
球団運営に携わってみて、非常に強く感じているのは、日本に12個しかない世界だということです。そのうちの1つの世界の中で考えられてきたことは大切なこともたくさんありますが、DeNAの企業経営という視点や角度から見ると、変える必要があるのではと思う部分も当然あります。新生・横浜DeNAベイスターズにも、DeNAの経営をしっかり共有していく必要があります。企業経営の意識を一人一人が根底にしっかりと持ってもらえれば、もっとよい、強い球団になれると感じています。
また、より戦略を持って物事を進めていくべきだと感じています。プロ野球球団というのはステータスが高いので、物事が何となくでも進みやすい環境にあります。一度何か新しい仕事が発生すると、その後は待ちの姿勢になり、入ってくるものをただ回すだけになってしまうこともあります。黙っていても、さまざまな方々からいろいろな話を持ち掛けていただけます。それはそれで大変ありがたいことととらえる一方、戦略に基づいて、自分たちから働きかけていく体質を強くしていかないとなりません。
それを痛感したのが、地域貢献のメイン活動である野球教室です。この取り組みがスタートした当初は、親御さんも同行していることが多く、家族という単位で野球に興味を持ってもらえるという観点から、小学校の低学年をメインターゲットにしていたと聞いています。ゼロからのスタートだったので、職員は自分たちの足で駆けずり回り、受け入れてくれる小学校を探しました。内容や意義を伝えて回り、苦労をしてようやくいくつかの小学校で野球教室を始めることができました。すると、次から次へとさまざまな依頼がやって来たので、今度はそれを受け続けることとなりました。
その結果、対象年代が幼稚園から中学生までに、開催地域も、より強化すべき足場の横浜市では何年も前から同じ回数(年間15回程度)のままで、神奈川県全体に広く薄く広がっています。広く神奈川県全体で開催することも、年代の範囲を広げていくことも素晴らしいことですし、こうした背景には当然いろいろな理由はあるわけですが、本来は戦略に基づいて行うべきものが、戦略が意識されなくなったまま地域貢献活動を変革させずに継続しているのが現状です。
球団が大切している「継承と革新」という考え方をモットーに、今の活動はそのまま大切にしつつ、改めて戦略を見直し、第一段階は横浜市に、とりわけ小学校低学年を対象としてしっかりとした活動を行い、第二段階として神奈川県全般に広げていくほうが、明確な成果につながるはずだと考えています。
――地域に対する活動については、「社長室兼地域貢献室」という部署を新設しました。ここではどのような取り組みがなされるのでしょうか。
池田 私自身参加し体験した中においても、野球の未来、横浜の野球の未来のためにも野球教室が最重要と考えていますが、そのほかにも、ベイスターズの専属チアチームが、チアリーディングの活動を通じて地域の子どもたちと触れ合ったり、横浜市の体育関連の行事に選手やマスコットが参加して、地元の方々と触れ合ったりする機会など、より多くの方々との接点をより多く持つようにしています。
また、DeNA本社が主体となって、ビッダーズというECモールの中に「横浜」をフューチャーした仕組みをつくることを検討しています。すでに、横浜元町商店街の方々とも話を始めています。DeNAとも連携して、さまざまな形で横浜を盛り上げていければと思います。
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