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サービス品質を武器にタイから海外展開を加速 日本駐車場開発2012年 それぞれの「スタート」(2/2 ページ)

日本駐車場開発は2011年、タイに現地法人を設立し海外展開に向けた礎を築いた。ホテル並みのサービスレベルの実現に取り組みつつ、2012年は海外展開を加速させる。

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現地人材のマネジメントが成功の鍵

 川村氏によると、駐車場の改善に向けた方法論はすでに確立しているのだという。極端に言えば、暗ければ照明を増やし、汚れていれば掃除を徹底させればよいのである。

 ただし、改善策を完遂させるには、何人ものスタッフに従来の仕事のやり方を見直させる必要がある。そこでの一番の問題がスタッフの意識変革であり、そのためのマネジメントの重要性を川村氏はタイで痛感させられたのだという。

 タイ法人の従業員は現在約80人で、そのほとんどが現地雇用スタッフ。うち20人ほどがオフィスワーカーだが、こうした人材の中にはTOEICで900点以上を獲得する優秀な人材も少なくないのだという。そこで川村氏がまず手をつけたのが、スタッフの処遇である。具体的には、同業他社よりもあえて高い給与水準を設定することで“やる気”を引き出そうとしたのである。加えて、タイ人の国民性を考慮し、スタッフの指導法についても配慮を払った。

「経済が右肩上がりの新興市場である以上、給与は1年もすれば上げざるを得ない。ならば、最初からその給与水準で仕事を始めてもらうことで、社員の士気も高められるはずと考えた。また、タイ人は日本人よりもプライドが高く、人前での注意が侮辱ととらえられ、それが退職の理由になることもある。そこで、伝えたいことがあるときには個室に呼び、端的かつ冷静に伝達することを心掛けた」(川村氏)

 また、全社規模のミーティングを開催し、駐車場の現場で働くスタッフも含めて優秀な人材を表彰するとともに賞金も贈呈する。これも、人材を適切に評価するための活動の一環である。併せて、川村氏はスタッフと次のような約束を結んでいる。

「スタッフ全員を絶対に幸せにする。問題や悩みがあれば必ず助けるので何でも相談してほしいと常日ごろから伝えている。パートナーとして一緒に働くのであれば愛情は欠かせないはずだ」(川村氏)

 アジアをはじめ新興国に進出する日本企業の多くは、安い人件費で現地の人材を雇用しようとする。しかし川村氏は「優秀な人材であれば、日本人と同等、あるいはそれ以上の給料を払って然るべきだ」と力を込める。

 こうした川村氏の努力の甲斐もあり、同社は駐車場運営のいわゆる“エバンジェリスト”としてビルオーナーの信頼を獲得することに成功した。今ではタイで最も巨大な商業施設の駐車場運営を任せられるまでになっている。

目指すのは駐車場の“コンシェルジュ”

 日本駐車場開発はすでに中国・上海にも現地法人を設立している。次なる展開先としてマレーシアなどにも関心を寄せている。そのいずれにも共通するのが、今後、急速な成長を見込める国であるということである。シンガポールや香港などの都市は市場こそ巨大であるものの、「成熟化が進んでいるために、現時点で参入を急ぐ必要はそれほど大きくない」(川村氏)からだ。

 もちろん、国ごとに国民性や文化は大きく異なり、新規参入にあたっては改めて現地の従業員との円滑な関係を築くことが求められる。そこで同社が今後、取り組むのが駐車場におけるさらなるサービスの向上である。

 駐車場の管理における考え方は、従来は「警備」が主であり、それゆえに、無愛想な対応が当たり前であった。だが、日本駐車場開発は「サービス」としてとらえ、日本においては、まずはガソリンスタンド並みのレベルを目指し、その後、レストランや一般のサービス業レベルに引き上げた。現在では、銀座のデパートや5つ星ホテルのバレーサービスまで手掛けるほどだ。こうした積み重ねによって顧客から信頼を勝ち得てきた。

 一方で、従業員にとっては、サービスの質の高さでビルオーナーや駐車場の利用者から評価されれば、より大きなやりがいを感じることができ、“協働”への意識も高まるはずだという。川村氏は「これからは日本のみならず海外でもホテル並みのサービスレベルを目指したい」と意気込む。

 2011年、タイはまれにみる大洪水が発生し、同社スタッフも少なからずその被害に見舞われた。そうした中、スタッフに対して金銭的な拠出を行うなど、親身になった支援活動を展開し、さらなる信頼を獲得するという好循環を生んでいる。

 2012年、日本駐車場開発は海外展開において、どんな成果を得ることができるのか――。

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