「なぜ、コンサルティング業が存在しているのか?」――社内コンサルタント的な働き方のススメ:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)
コンサルティング会社は不思議な業態だ。クライアントが自分でできることを、わざわざお金を払って外部に依頼する。その存在理由とは。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
昨年12月に、「1秒でわかる、コンサルティング業界ハンドブック」(東洋経済新報社)という本を、かつてA.Tカーニーで一緒に働いた安藤佳則氏と共著で出版した。外資系経営戦略コンサルティング業界に20年以上身をおいてきたが、一度、自分の世界を客観視してみたかった。本書は、そうした機会を提供してくれた。「なぜ、コンサルティング業は存在しているのか?」という問に、答えを出したかった。
「時間を買う」
コンサルティング会社とは、不思議な業態だ、クライアントが自分でもできることを、わざわざお金を払って外部に依頼するわけだ。しかも、経営戦略立案というコア機能をアウトソースするというのは、変なことかもしれない。
どうして、コンサルタントを雇うのか? その答えの一つが、「時間を買う」効果であるといわれることが多い。その意味合いは経営課題を分析するためのコンセプトや、フレームワークをクライアント以上によく知り、かつそれらの実際の業務への適用経験が多いことによる経験効果により、早く、的確に答えにたどり着けるという期待である。
実際大手コンサルティング各社は、成長と拡大のなか業種、機能、地域でのコンサルティング経験を蓄積し、知財のスケールで優位性を構築している。優秀な若者を採用し、トレーニングに投資をし、こうした知財を世界的に共有することで、クライアントに、より効率の高い技法(ツール)の使い手としての付加価値を提供する。
1960年〜1990年代にかけて、大手コンサルティング会社を中心に興ったコンセプト開発競争の時代は、もうすでに過去のものとなってしまった。それはクライアントが新奇な発想や手法以上に、コンサルティングに業績向上への直接的貢献を求めだしたためでもある。したがって、1990年代の「デコンストラクション」のコンセプト開発以降、世の注目を集めたコンセプトは登場していないともいわれている。それでは、知財のスケールでの優位性というツールでの付加価値は、より小さくなっていく運命にあるのではなかろうか?
アメリカのコンサルティング業界は、ビジネス・スクールの成長と軌を一にした。いま、わが国では少し形を変えて社内教育への大きな投資、社会人向けのビジネス・スクールの隆盛などにより、経営戦略コンセプトの流通度合いは、一時代前とは比べものにならないほどに、広がっている。ますます、コンサルティング業の存在価値に対してマイナスの材料が増えることになる。逆に言うと、日本の会社の幹部、中堅社員そのものが自社のコンサルタントとして各種のコンサルティング分析ツールを駆使し、経営改革をリードしていくことが主流の時代になってもおかしくない。欧米でも自社グループ内に、コンサルティング部門を作る動きは大手企業で盛んである。
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