官のずさんな情報管理が日本をだめにする:藤田正美の「まるごとオブザーバー」(1/2 ページ)
原子力災害対策本部の会議の公式議事録が作成されていなかった。それだけではない。東電に設置された統合対策本部の公式議事録もないのだそうだ。これで物事が決められるのだろうか?
それにしても驚いた。3月11日に発生した東日本大震災、そして東京電力福島第一原発の事故。首相官邸は当然危機管理モードに入り、危機管理緊急センターが立ち上がる。そこに続々と各省庁の局長級幹部が集まり、政府の行動が決定されていく。しかし当時の菅直人首相を本部長とする原子力災害対策本部の会議の公式議事録が作成されていなかった。全部で23回開かれたそうだが、その公式記録がないというのである。それだけではない。東電に設置された統合対策本部の公式議事録もないのだそうだ。
公文書管理法を持ち出すまでもなく、政府がどのようにして決定にいたり、その政策を実行したのか、ということは国民に公開されるべき筋のものである。もちろんその時には公開できない情報もあるだろうが、それは精査して時間が経過してから明らかにすればよい。新聞報道によれば、経済産業省の森山善範原子力災害対策監は「会議の決定事項など重要な部分は記者会見で説明し、かなりの部分は情報公開されている」と語ったとされている。森山氏は、だから議事録は必要ないと言ったわけではないが、この理屈はある意味まったくの官僚の屁理屈である。
当時の枝野官房長官が「健康にただちに影響ない」と繰り返し会見したのは目に焼き付いているが、これがどういう情報に基づいて発信されたものなのかということは、会議の記録なくして検証することはできない。検証できなければ、もし同じようなことが発生した場合、会議の参加者が共有できる公式の情報がないということになって、今回の議論と同じ議論を繰り返すことにもなりかねない。それこそ「当時の事情を知っている人を探してこい」などと総理大臣が命令するという間抜けな状況にもなりかねないのである。
原子力災害対策本部にしろ東電との統合対策本部にしろ、記録がないわけではない。非公式なもの、録音、参加者のメモなどたくさんの資料はあるだろう。しかし公式な議事録がなければ公文書として保管されない。ここが重要なことである。
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