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部下の気持ちを駆り立てる「心のクリック」ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

ロジカルシンキングが定着してきているが、それだけでビジネスがうまくいくわけではない。ロジカルに考えることはもちろん重要だが、相手の気持ちを動かすことも必要だ。そこで使える「再現性のあるスキル」を身につけよう。

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 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


 簡単なクイズをしてみましょう。3秒で答えてください。

「あるお店では、バットとボールはセットで1ドル10セントします。バットの値段はボールより1ドル高い。ボールはいくらですか?」


「ほんとうに使える論理思考の技術」

 「10セント!」と回答した人は、残念ながらハズレ。直感に頼ってパッと分かりやすい数字を選ぶという罠に落ちてしまいました(正解は、ボールが5セント、バットが1ドル5セント)。もっとも、このような失敗は多くの人にあてはまることで、人間とは自分たちが思うほどには合理的ではない、との考えがさまざまな分野で主流になりつつあります。

 例えば経済学の分野でも、従来の「合理的な意思決定者」としての人間を否定した「行動経済学」で、プリンストン大学のダニエル・カーネマン教授がノーベル賞を受賞しました(冒頭に掲げた問題も同教授考案です)。このような大きな潮流の中、これまでともすると合理性や「ロジック」に偏ってきたビジネスパーソンのコミュニケーション方法も、見直す必要に迫られているのではないでしょうか?

ロジカル・シンキングの落とし穴

 1990年代後半からロジカル・シンキングは一世を風靡(ふうび)しました。その背後にあった問題意識は、欧米先進国に「追いつき追い越せ」で進んできた日本経済がバブルの末に行き詰まったこと。先行事例を失った日本経済を立て直すためには、現状を把握した上で自分達の頭でロジカル(合理的)に計画を立てることが求められ、そこに欧米的なロジカル・シンキングという考え方がピッタリあてはまったのです。

 筆者はこれまで10000人を超える経営幹部やその予備軍にマネジメントスキルを教えてきましたが、そこで得た肌感覚としては、この10年で日本人のロジカル・シンキングに対する理解度は格段に上がりました。「仮説思考」、「主張と根拠」などの用語をビジネスの現場で口にする機会も多くなり、なによりも「ビジネスでは筋道立てて合理的に考えなければならないのだ」というスタンスはもはや当たり前といってもいいでしょう。

 しかし、冒頭の問題が明らかにしたとおり、人間は直感に頼ったり、感情に流されたりして、必ずしも合理的な判断をしているわけではありません。それなのにロジカル・シンキングに「毒されて」、あまりに合理性にこだわりすぎると、かえって仕事がうまくいかなくなることもあるのです。

 典型的なのは社内のチームワーク。「業務の効率化」という名目の下、社内の仕事を洗い出してその担当者と責任権限を明確にするというアプローチは、一見すると極めて合理的。さぞや会社の業績は急上昇……と思いきや、担当が決まっていない問題が発生したときに誰も拾わないという「ポテンヒット」につながり、かえって組織運営が難しくなってしまいます。

 昔はそこをチームワークという見えないセーフティネットで拾っていたのが、今は「それはわたしの仕事の範囲ではありません」などと極めて合理的に見過ごされてしまいます。はたまた、ロジカルに考えることが得意なあまり、何事も批評家的な態度を取る社員。「それは上手くいきませんよ、なぜならば……」なんて得意げに話す人を見ながら「はぁ〜」と心の中でため息をついた経験がある人も多いでしょう。

 もちろん、ロジカルに考えること自体が悪いといいたいわけではありません。昔のようにKKD(カン・経験・度胸)でものごとを決めるのではなく、事実からの論理的帰結によって意思決定を行うことは、今の時代は重要です。ただ、人間が「不合理さ」を抱える存在である限り、論理「だけ」でビジネスがうまく進むはずもありません。ここに、論理とともに「心理」、すなわち相手の気持ちを動かす方法論の必要性がでてくるわけです。

 といって、価値観の多様化が進んだ今の時代、昔ながらの「飲みニケーション」や「社内運動会」だけでチームワークを高めるのはムリというもの。組織としての仕組みは作りつつ、日常の職場においても「相手の気持ちを動かす」コミュニケーションで、周りを巻き込みながら仕事をすることがビジネスパーソンには求められています。そのような際に使える「再現性のあるスキル」を身につけようというのがわたしの著書「ほんとうに使える論理思考の技術」で伝えたいことなのです。

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