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グローバル人材を世界中で育成することが明日の企業を創るNTT DATA Innovation Conference 2012レポート(2/2 ページ)

「NTT DATA Innovation Conference 2012」においてG&S Global Advisorsのフクシマ社長とNTTデータの榎本副社長が「日本企業におけるグローバル人財育成」と題し多様性を受け入れ柔軟に仕事をする人材をいかに育成するかを語った。

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これまでの人材育成の慣行を改め、プロの育成を

 組織を大切にし、話し合いと共同作業によって問題解決へと導くアジア型、つまり日本人ビジネスパーソンも捨てたものではない、と少しほっとしたところでフクシマ氏はある調査結果を基に日本のビジネス社会の脆弱性を明らかにする。

 それは、グローバル・アントルプレナーシップ・モニター(Global Entrepreneurship Monitor: GEM)の起業家精神に関する調査だ。GEMは、ベンチャービジネスの成長過程を調査し、起業活動がどのようにして活性化するかを解明しながら、国の経済成長力への影響を測定することを研究目的にしており、米国バブソン大学と英国ロンドンビジネススクールの研究者らによって組織された。2009年に行われたこの調査分析から換算された起業活動の活発さの度合いを示す「起業活動率」という指標で、日本は他の先進国に比べてはるかに下位に属することが分かったのだ。

 「この結果から、日本のビジネス社会は“失敗を恐れ、リスクを取らない”傾向が強い社会だということが想定される。これからのグローバル人財は、変革を実践する“チェンジ・エージェント”でなくてはならない。そうした意味で、日本のビジネス社会、ビジネス・パーソンもマインドセット、つまり認識を変えていく必要があることは明らかだ」(フクシマ氏)

 フクシマ氏は、日本のビジネス・パーソンの育成過程を見直すべきだと指摘する。それは、多様な環境でも通用する汎用性の高いスキルを持つプロフェッショナルの育成を優先していくことだという。

 「社内の部署を定期的にローテーションしてゼネラリストを育てることを重要視していては、本当のプロフェッショナルは育たない。ある分野では誰にも負けないコアのスキルを持ち、その上で社長としての戦略性や経営能力を持つ経営に携われる人財を育成すべきだ。企業がこうした“どこででも通用するプロの変革者”を育成することで、リスクを取りながら変革をもたらす人財が増え、日本全体が活性化していくと思う」(フクシマ氏)

多様性のるつぼで柔軟に仕事をする人材を

 フクシマ氏の講演の後、榎本氏とフクシマ氏のディスカッションに移った。フクシマ氏からNTTデータが考える「グローバル人財」について聞かれた榎本氏は次のように語った。

 「ドイツ、アメリカ、日本にある研修センターをフル活用して、若手からリーダークラスまでそれぞれ“グローバル人財”となるための研修を行っている。しかし、それ以上に人を育てるのは仕事の実践の場だ。若い技術者を各地域に送って現地のビジネスを経験させている。グローバル企業ではスタッフに寛容の精神を学ばせることが重要だ。グローバルには、宗教、文化も含めてさまざまな背景を持った人たちがいる。それらの背景の違いを尊重する精神は世界で活躍する上で大切な資質だと考えている」(榎本氏)

 これに対して、フクシマ氏はダイバーシティ(多様性)への対応力の重要性を語る。

 「グローバルに活躍するには、多様性への対応力が一番重要な資質だ。宗教、性別、人種、国籍、住んでいる場所など、人はさまざまな多様性を持っている。多様性がるつぼのように複雑にからむ中で、柔軟さを失わないことはグローバルで活躍するための条件の1つで、わたしは“外柔内剛”という言葉をよく使う。外に対しては、柔軟に、寛容に対応する。しかし、内側では強い信念、例えば“誠実さ(integrity) ”を失わないという姿勢である。2年程前から、“グローバルCEOの要件”というテーマで約70名の経営者にインタビューを実施したが、その中で一番重要とされたのは“高潔さと品位をもって行動する”という要件である」(フクシマ氏)

 続けて榎本氏は、「内外一体」という言葉で人材育成の要諦を説明した。NTTデータは海外の人材も国内の人材も一体となって育てていく方針なのだという。「東京のヘッドクオーターがすべてを考え、海外拠点に対して数字の結果だけを求める、といったマネジメントはもう時代遅れ。本社は各リージョン、各拠点がどうしたら良いパフォーマンスを上げることができるかを現地と一体となって考え悩み、説明責任を果たしながら事業の道筋を示す役割が求められる。数年かけて当社のシステムもグローバルに合わせて変えていく。統一したビジョンを実現するには、統一したオペレーションが実行できるシステムが必要である」

 こうしたシステム基盤の統合も、規模の大きいリージョンに合わせるのではなく、最も合理的なオペレーションを実施しているグループ会社のベストプラクティスにのっとって立案しシステムに落としていく方針だという。東京の本社が決めたから、といった説明ではグローバルのビジネスは円滑に動いていかない。

 淡々とグローバルマネジメントを語る榎本氏に、フクシマ氏がそのウラにある苦労を見抜いたかのように「榎本さんの仕事は各地域に住む猛獣と相対する猛獣使いのようなもの」と笑いながら向けると、榎本氏も苦笑しながらうなずく。そしてフクシマ氏は、「NTTデータはみんなが一緒になって楽しく働こうじゃないか、という気概に満ちていると感じた」と締めくくった。

 グローバル人材が増えることで、面白いわくわくするような仕事も増えていく、これは90年代のグローバル化の局面では語られなかった話ではないだろうか。超円高、新興国の台頭など厳しい環境は続くが、フクシマ氏のいう「マインドセット(認識)の変換」が少しずつ日本企業に浸透し始めているのかもしれない。

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