勝間氏と4省庁が語るテレワークの今(1/2 ページ)
このたびテレワークJAPANシンポジウム2012が開かれ、経済評論家の勝間和代氏や、経産省など各省庁のテレワーク担当者が考えを示した。
テレワークJAPANが主催するセミナーイベント「テレワークJAPANシンポジウム2012」が4月24日に都内で開かれた。経済産業省、総務省、厚生労働省、国土交通省のテレワーク担当者と経済評論家の勝間和代氏がワークスタイルのあり方や在宅勤務の有用性などを討議した。
勝間氏といえば、時間の効率化などを目的に都内を自転車で移動することで知られている。また、自宅などオフィス以外で仕事をすることが多く、現在、オフィスに行くのは週に1回程度だという。勝間氏は「仕事量は以前と比べて1.5倍増えたが、(仕事に費やす)時間は短縮している」と効果を示す。勝間氏によると、通勤電車などの移動時間の長さが仕事の生産性にかかわるため、そのときに何かを生産しない限り時間は無駄になってしまうという。
こうした点は企業でも注目されており、生産性向上などの理由から在宅勤務を検討する企業は増えてきた。しかしながら、「自宅で働く社員を管理できない」「セキュリティ面で不安だ」といった声が多く聞かれるのも事実である。この状況に対して勝間氏は「マネジメント手法を強化しても仕方なく、あくまで本人にやる気があって、自発的に働くかどうかが重要。例えば、オフィスで仕事をしていても上司が部下を四六時中、見張っていることなんてないはずだ」と強調する。
セキュリティに関しても、ITの進展によって仮想デスクトップやシンクライアントなど数多くの有効なセキュリティ対策製品があるが、最終的には社員自身がセキュリティの重要性を理解して、自発的に運用しないと意味がないという。従って、テレワークを行う社員には、ある程度の自己管理スキルが不可欠なのである。
経営者のトップダウンが不可欠
この見解に対して、経済産業省 商務情報政策局 サービス政策課長の前田泰宏氏も「時間と場所の管理ができる自己能力の高い人がテレワークを実践している」と同調する。
一方で、日本企業におけるテレワークの普及は今一つだという。前田氏は、福利厚生の一環として社員のモチベーション向上のためにテレワークを採用するなど、企業戦略として経営者がトップダウンで積極的に取り組んでいくべきだと考えを示した。
また、テレワークを導入することで効果を得やすい職種の一例として、前田氏はコンタクトセンター業務を挙げる。従来、企業のコンタクトセンター(コールセンター)は、消費者からのクレーム対応などが主な仕事とされていたが、現在では企業の多くが顧客接点の最前線としてコンタクトセンターを重要な位置付けに据えつつある。そこで働くオペレーターには結婚や出産を機に退職してしまう女性も少なくないため、在宅勤務環境を整えることによって優秀な人材流出を防ぎたいという狙いがあるのだ。
被災地の雇用促進につなげたい
昨年は節電の影響もあって、NTT、帝人、日立製作所、ソフトバンク、NECなどテレワークを導入する大手企業が見られた。NTTデータ経営研究所の調査によると、東日本大震災の発生以前からテレワークを実施する企業は全体(N=1015)の13.8%だったのに対し、2011年6月には20.1%に増加した。さらに、震災前からテレワークを導入する企業の72.8%が震災時にも支障なくテレワークを実施できたという。中でも「以前から在宅勤務に取り組んでいた企業の多くはワークライフバランスではなく、生産性アップを目的に導入していた」と、総務省 情報流通行政局 情報流通高度化推進室 室長の吉田恭子氏は述べる。
テレワークに対する民間の取り組み事例として、昨年7月に発足した石巻テレワーク就業支援プロジェクト「テレワーク1000プロジェクト」を吉田氏は紹介した。これは被災地における雇用促進を目的としたもので、被災地外の企業が業務の一部を被災地に発注し、被災地の求職者が自宅や仮設住宅、コールセンターなどでテレワークシステムを活用して就業することを支援する。2012年2月末時点でNTTドコモやパソナなど126企業・団体が参画し、既にのべ数百人の就業機会を提供したという。今後は石巻での実績を基に、ほかの被災地自治体に横展開していく。
また、総務省では2012年度から「テレワーク全国展開プロジェクト」をスタート。テレワークを導入する上で見られる情報セキュリティに対する懸念や、テレワークシステムに関するノウハウ不足といった課題を解決するためにガイドラインを策定したり、中小企業を中心に業種別、規模別のテレワーク導入優良モデルを確立したりして、全国的なテレワーク普及を図る。
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