顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。
「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に本荘事務所 代表で、多摩大学客員教授でもある本荘修二氏が登壇。監訳・訳者である本荘氏がトニー・シェイの著書である「ザッポス伝説」の内容に基づいて、「顧客が感動しファンになる米国No. 1オンライン靴店ザッポスに学ぶ 〜もえる社員・ほほえむ顧客〜」と題した講演を行った。
顧客がファンになるサービス
ザッポスは1999年に創業した全米ナンバーワンのオンライン靴店。2009年度の売上は10億ドルで創業者のトニー・シェイはBrandweek誌の「マーケター・オブ・ザ・イヤー2010」の1人に選ばれたほか、ザッポスはFortune誌の「最も働きたい会社」で2011年に6位、2012年に11位に選ばれている。
ザッポスは、なぜこれほどまでに注目されるオンライン靴店になったのだろうか。
「24時間年中無休のコールセンターによるサポート、送料や返送料が無料であり、365日以内であれば返品可能なこと、そして最速8時間という迅速で間違いのない配送サービスが高く評価されている」(本荘氏)
ザッポスでは、顧客サービスは全社員の仕事として取り組んでいるが、特にマニュアルはなく、対応は社員に任されている。例えば、電話対応の時間は無制限のため、最長で8時間半の対応をした強者もいるという。また自社に在庫がなければ他社サイトをチェックして顧客に伝えたりすることでも顧客の評価を高めている。
「単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指しているのがザッポスという会社だ。Webサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、感動のあまりに涙ながらに書いた礼状を送る顧客もいるほど。きわめて高い顧客満足を実現している」(本荘氏)
このザッポスの顧客サービスを自社にも浸透させるための10の方法は、次のとおり。
(1)経営トップが優先事項であることを示す。
(2)日常的に使われる言葉に“ワォ!”を加える。
(3)担当者を信じ、権限を与える。
(4)あまりにひどい顧客は縁を切る。
(5)アップセルをしない。
(6)フリーダイヤルを隠さない。
(7)投資と考え、経費とみなさない。
(8)全社に“ワォ!”という経験を伝える。
(9)情熱を持っている人を雇う。
(10)顧客、社員、取引先にすばらしいサービスを提供。
※出典:トニー・シェイ著「ザッポス伝説」
「マクドナルドやサムスン、中古車買取・販売のガリバーインターナショナルなど、最近よく“Wow”という言葉を見かける。Wowマーケティングは、従来型の顧客満足度にとどまらず、顧客が期待していないことをする、あるいは顧客の期待を超えることが重要。それにより価格競争に翻弄されることなく、ファンを増やすことができる。これはマーケティング3.0の本質と符合している」(本荘氏)
コミュニケーションとつながり
これまでのマーケティングは、企業がメディアやチャネルを介して顧客とつながる「マスマーケティング」だった。しかしCRMの登場により、企業と顧客が1対1でコミュニケーションできるようになった。さらにネット社会では、企業と顧客だけでなく、メディアも含んだ顧客と顧客のつながりに変化している。
「ソーシャルウェブの進展で、顧客経済性の劇的な変化が起きている。ワォ!と言いたくなる体験は人に伝えたくなり、それを聞いた人は感動を2次体験する。さらにそれを聞いた人は別の人にも伝えたくなる。これが継続するとエモーショナルコネクションが醸成され、顧客が“ファン”化する」(本荘氏)
ザッポスでは顧客をファン化する基礎となる、次の10項目からなるコアバリューに取り組んでいる。
(1)サービスを通じて「ワォ!」という体験を届ける。
(2)変化を受け入れ、推進する。
(3)楽しさとちょっと変なものを創造する。
(4)冒険好き、創造的、オープンマインドであれ。
(5)成長と学びを追求。
(6)オープンで誠実な人間関係を築く。
(7)ポジティブなチーム精神を築く。
(8)より少ないものからより多くの成果を。
(9)情熱と強い意志を持つ。
(10)謙虚であれ。
※出典:トニー・シェイ著「ザッポス伝説」
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