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顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。

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企業文化はそれこそがブランド

 ザッポスのような企業文化を実現するためには、ワオ!という経験を(1)表面的に知るレベルから、(2)意識され、推奨される価値観のレベル、そして(3)価値観が無理なく共有され、当たり前になるレベルという3つの段階がある。これを実現するためには、人のマネージメントも重要になる。

 例えばザッポスでは「謙虚であれ」というコアバリューにそぐわない場合は直ちに不採用となる。また研修中にやめる新人には、それまでの賃金と4000ドルの退職金を支払っている。「これは、お金だけにつられる人はいらないということだ」と本荘氏。逆にオフィスの外でもみなと楽しめるような人が採用されている。

 「仕事とプライベートを区別するワーク・ライフ・バランスではなく、仕事も人生の一部であり、1つのものと考える人材の採用を重視している。これにより最大の品揃えを実現し、顧客サービスを向上、さらにコアバリューを確立して幸せを届けるという企業文化が生まれた。こうした企業文化は、それこそが“ブランド”となる」(本荘氏)

理論に基づいて企業文化を確立

 ザッポスの経営モデルは顧客や社員のハピネスを実現するという目的を果たすことを企業文化としており、それを顧客の経験に生かし利益を生み出すという新たな経営モデルとなっている。ここで重要なのは、幸福度である。例えば日本の幸福度は、178カ国中90位と低い順位となっている。

 しかし、OECD加盟国で見ると日本は34カ国中19位。家計可処分所得は平均を上回り、資産は平均の約2倍、就職率も70%とOECD平均の65%を超え、失業率も低いことなどから、多くの幸福指数で平均以上と評価されている。ただ、生活に満足している日本人は40%にとどまり、平均の59%を大きく下回っている。

 「企業文化を実現するためには理論も必要。ペンシルベニア大学のセリグマン教授は、ポジティブ心理学で幸福のタイプを、快楽の人生、充実の人生、意味のある人生の3つに分類。快楽は一時的だが、何かに熱中することで時間を感じずに充実感を得られる。さらに大きな目的に向かう意味のある人生の幸福感は長く継続する」(本荘氏)。

 ザッポスにおける職場でのハピネスを向上させる主な要素は、自分をコントロールすること、常に進歩を感じること、チームや顧客とのつながりを持つこと、ビジョンと意味を理解することにより構成される。このような理論に基づいて、かつ現場の実践の徹底が企業文化の確立において重要なポイントになる。


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