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うまくいっている企業はやっている 経営人材育成、成功の鍵(後編)次代の経営人材をつくる3つの壁と成功の鍵(1/2 ページ)

経営人材育成の出発点は、現経営者のコミットメントと候補者の経営者になる「覚悟」

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 前回挙げた3つの壁、つまり「早期選抜の壁」「配置の壁」「現経営幹部の早期ポストオフの壁」を乗り越えるためには、経営幹部の積極的なコミットメントならびに全社的なコンセンサスがなければ進まない。そのためには、本質的な議論が必要になってくる。

成功の1つめの鍵は、経営幹部全員のコミットメント

 「なぜ経営人材を早期に選抜して、計画的に育てなければならないのか」という問いに関する議論である。経営幹部育成がうまくいっている会社は、経営ボードで、この議論をしっかり行っている。逆に、経営ボードでのコミットメントがない会社で、経営人材育成がうまくいっている会社は、弊社の調査では、皆無であった(注1)。

 前回でも触れたように、経営人材候補に修羅場を経験させるために異動させることは、短期的にはマイナスの影響が出るし、現場からの抵抗がある。それに対して、経営はひるまず説得する明確なロジックが必要になる。

 「持続的に成長させるには、優秀な経営者を輩出していく必要がある。候補者は、今でも優秀だが、こういう経験や能力がまだ足りない、そのためにも、新たな修羅場経験をさせないといけない。」というようなロジックを、経営者トップだけではなく、経営幹部全員でのコミットがなければうまくいかない。そのようなコミットメントを醸成させるためにも、経営ボードで何回も議論し、経営幹部一人ひとりが経営人材を育成するには、何が必要か考える機会を持つことが重要である。経営者育成のベースは、経営幹部全員のコミットメントである。

2つめの鍵は、候補者の「経営者になる覚悟」である

 育成される候補者、つまり学びの主体者に視点を変えてみよう。候補者一人ひとりは、経営者になる「覚悟」をしているだろうか。それに向けて、本気で学ぼうとしているか、そのためには何をどのように学べばいいのか分かっているだろうか。経営者育成のためのシステムがどれだけ整っていたとしても、学ぶ本人が本気で学ぶ気がなければ、学びは身につかない。

 そういう観点で、候補者の動機形成を正しく行うことが、経営者育成の2つめの鍵になってくる。「経営者になる」ということを決めていない候補者ときちんと向き合い、期待を伝え、「覚悟」を決めさせることが出発点になる。しかしながら、必ずしもそうなっていない企業が多く散見される。

 つまり、経営者育成の要諦は、候補者一人ひとりに関わり、対話を通して、候補者の「覚悟」を促すことにある。現在の経営幹部が分担し、候補者一人ひとりに対して、会社の方針、候補者のキャリアの可能性、強み/弱みのフィードバック、「強みを伸ばす」「弱みを克服する」プランの話をする。いわゆるコーチングである。

 経営人材育成ができている会社は、現役の経営幹部が候補者に対して、しっかりとコーチングを行っている。正直で丁寧な対話によって、初めて候補者は経営者になる「覚悟」ができてくる。逆に、現役の経営幹部が候補者ときちんと向き合って関わり、期待を伝えない限り、経営者としての「覚悟」は生まれてこないし、学びの主体者になりえない。

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