ビジネスに直結するプレゼンテーションのテクニックを学ぶ:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/3 ページ)
アイティメディアが開催している「ITmediaエグゼクティブ勉強会」にマイクロソフト テクニカルソリューションエバンジェリストである西脇資哲氏が登場。エバンジェリストとしての活動で培ったプレゼンテーションの経験やノウハウを生かし、「カリスマエバンジェリストに学ぶ、聴衆を魅了するドラマチックなプレゼンテーションとは」と題した講演を行った。
「あらためましてこんばんは。"にしわき もとあき"と申します。"資哲"という名前は難しく、読んでくれた人も、書いてくれた人もいません。現在は、マイクロソフトという会社の西脇として、セミナーや記事、ウェブページなどで皆さまにお会する機会があると思います。マイクロソフトでは、エバンジェリストという仕事をしています……」。講演の冒頭、西脇氏は自身をこう紹介した。
絶対に失敗が許されないプレゼンテーション
エバンジェリストとは、"伝道師"と訳されるが、人にものを伝えるのが仕事である。活躍の場は、記者、編集者、ライター、カメラマン、各種アナリスト、業界ご意見番などが数百人集まる記者発表会や、顧客、パートナー、リセラーなどが数千人集まるイベントやセミナーなど。このときのデモンストレーションでは、絶対に失敗が許されない。もし失敗しても、それを気づかせないカバー力が求められる。
「記者発表会で失敗すると、新聞や雑誌、オンラインメディアなどで、会社や製品の悪いニュースが報道されてしまう。またイベントで失敗すると、ブログ、SNS、人伝などで、会社や製品の悪い評価が広まってしまう。ワンチャンスをモノにしなければ、会社が大きな損害を被る可能性もあるために、エバンジェリストのデモンストレーションやプレゼンテーションの質は非常に重要になる」(西脇氏)
西脇氏は、これまでのエバンジェリストの経験と、培ったノウハウを生かし、プレゼンテーションやコミュニケーションの向上を目的とした「エバンジェリスト養成講座」を開催している。
「経験豊富で、営業力やコミュニケーション力、さまざまな知識をお持ちの皆さまが、プレゼンテーション力を有することで、さらにビジネス力の向上が期待できる」(西脇氏)
プレゼンテーションの上達は"体験"から
人材育成の一環として、プレゼンテーションのトレーニングを行っている企業は多い。ここで行われているトレーニングは、自己啓発型のトレーニングやワークショップ・シミュレーション型のトレーニングである。これらのトレーニングは、例えば「目の前のりんごについてプレゼンする」という課題に対し、一人ひとりが実際にプレゼンテーションを行い、それをビデオに撮って、良いところ、悪いところを参加者全員で確認し、修正していくというものである。
「残念ながら高いお金を払って目の前のリンゴをプレゼンテーションする方法では、プレゼンテーション能力は向上しない。これでうまくなるのは"感想"を述べることである。プレゼンテーションと感想は違うもの。日本の教育では、ことあるごとに感想文を書かされる。しかし感想文は先生に提出するだけで、みんなの前で発表することはない。一方、米国では、"あなたが1番大好きなおもちゃをみんなの前で発表する"という教育が行われている」(西脇氏)
この教育方法では、学校に大好きなおもちゃを持ってきて、みんなの前で自慢をすることで、ほかの生徒もほしいと思わせる。例えば、このおもちゃはここが優れており、どれだけの種類があり、どこに行けば購入することができるということを語る。あくまでもプレゼンテーションを教えるのではなく「体験」を語らせる。これがプレゼンテーションの原点となる。
一般的にPCをプレゼンテーションする場合、CPUが何で、メモリがいくらで、どれだけのハードディスクを搭載していてと"仕様"を語ることが多い。しかしこれでは、同等の性能のほかのPCとの違いを伝えることはできない。そこで重要になるのが、体験を語ることだという。
「体験を語る場合、自分の好きなことに関しては"情熱"で語ることができる。しかし仕事の場合には、情熱で語ることは難しい。そこで"テクニック"の活用が必要になる」(西脇氏)
仕事で体験を語ることは困難なこともある。例えば自動車保険業界で、自動車事故の実体験で保険の有効性を語ることは難しい。しかし商品を販売している企業では、自社の商品は自分で体験してからプレゼンテーションすることが重要になる。
「スティーブ・ジョブズは、自社の製品を非常にうまく手に持ってプレゼンテーションをする。一方、ある日本メーカーの社長は、自社の製品を逆さまに持ってプレゼンテーションをした。プレゼンテーションは体験しなければ上達しない」(西脇氏)
プレゼンテーションで重要なのは"何を伝えたいか"
「プレゼンテーションは特別な能力ではない。誰でもできる」と西脇氏は言う。生まれながらにプレゼンテーションがうまい人はいない。そこで簡単なことからスタートし、繰り返し、繰り返しの努力が必要になる。
「1回より10回、10回より100回、100回より1000回のほうが上手になる。プレゼンテーションは、努力することで誰でも平等にうまくなる。また、プレゼンテーションに人数は関係ない。相手が1人でも、100人でも、1000人でもプレゼンテーションである。(西脇氏)
例えば、会社で上司に仕事をアピールし、昇格・昇給をお願いするのも、家庭で小遣いの値上げをお願いするのもプレゼンテーションである。相手に伝わればプレゼンテーションは成功だが、伝わらなければ失敗である。そこで重要になるのは、"何を伝えたいか"ということだ。
「一般的には、いつ、どこで、だれにが決まることが多い。しかしこれは、あらかじめ決まっていること。重要なのは、そのプレゼンテーションで伝えたいことを明確にしておくことである」(西脇氏)
伝えたいことは1つではない。伝えたいことが複数ある場合には「伝えたいことに順位を付ける」。理由は大きく2つ。1つ目は、60分のプレゼンテーション時間が20分になったときに優先順位の高いものだけを伝え、あとは捨てるため。もう1つは、プレゼンテーションには抑揚が必要であり、重要なことは強く、あとは弱く伝えるためだ。
「"今日伝えたいのは、これと、これです。後は資料を見て、分からないことがあればご連絡ください"というのが美しいプレゼンテーションだ」(西脇氏)
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