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グローバル化にも必須のIT、そのカギを握るのは「人」だ「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記(1/2 ページ)

エネルギー産業を取り巻く国内ビジネス環境に大きな変化の波が訪れている。自由化やグローバル化とパラダイムシフトが起こる中、大阪ガスにとってのIT部門のあり方とは。

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 国内では、主力のガス事業に加え、電力事業やLPガス事業など、総合エネルギー企業へと変革する大阪ガス。さらには海外でのガス権益取得、発電所買収、産業ガス販売の試行などグローバル化を積極的に進めている。

 広域多様化する企業グループにあってITを支えるのが、大阪ガスの情報通信部とオージス総研グループである。情報通信分野に加え、海外駐在経験もある綾部部長に話を聞いた。

ITは人脈を構築するツールにもなる

 ――綾部さんは情報通信部門と米国留学や英国駐在というキャリアを経験している。


大阪ガス 情報通信部長 綾部雅之氏

 1986年に入社し、そのまますぐに大阪ガスの情報システム部門を母体としたオージス総研へ出向し、その後1990年の米国留学を経て本社に帰社した。今では当たり前のように手にしているタブレット端末だが、性能は劣るが当時すでに動くスレートPCがあったし、オブジェクト指向など、先端技術に触れた経験はその後の人生にかなりの影響をもたらしたと感じている。

 私自身はIBMホスト、COBOL、バッチ処理など、いわゆる保守本流をまったく担当せず、AI、OOA/OOD、CASE、Macintosh、TCP/IPといった傍流ばかりやっていた。当然、1994年頃から商用化され始めたインターネットにもいち早く関わることとなり、「WEBは凄い!」と勝手に社内ポータルサイトを運営していた。ちなみに当時、Netscapeを起動するとMac風デスクトップ画面が表示され、今ではコンプライアンス違反のリンク先も掲載するなど、のどかな時代だった。

 自由闊達、好き勝手にやっている中、当時のIT部長から「そんなに面白い技術なら、社内の各部署やグループ会社に紹介してこい、困り事を聞いてこい!!」と背中を押された。その部長が勝手にアポを取るもんだから、100カ所以上は行脚しただろう。しかし、ユーザーに密着した泥臭い紹介活動を延々行ったことで、2〜3年の間に数多くのイントラネットのアプリを生み出すことに繋がったのである。結局、誰にとってもITは今も昔も身近で関心が高い分野であり、「好餌」があれば会ってもらえるいいネタになるし、ユーザーに近いところで仕事をする大切さを学んだ。

 その後、世間でのECブームに呼応するように情報通信部から転出し、企画部、事業開発部に異動となった。そこでは当初3名でスタートし、ガス器具のネット販売やリフォーム仲介サイト「ホームプロ」の立ち上げに関わった(仲介額は2012年度に150億円超まで成長)。楽しくワイワイやっていたのだが、スタートアップ時期はもう過ぎたであろう、と2001年に情報通信部に戻されることとなった。

 その後、2004年からの4年間、大阪ガスのロンドン事務所に赴任し、駐在業務や海外投資に関わることとなった。帰国後は大阪ガスの投資子会社「ガス&パワーインベストメント」に1年、大阪ガス本体の投資評価部に2年間所属し、2011年に7年ぶりに情報通信部へ戻ってきた。経歴としては、4分の3をIT部門で、残りが海外や投資関係という感じである。

 ――ITから、なぜそれまでと関係のないロンドン駐在や投資に携わることになったのか。

 ガス事業の原料であるLNGは全量海外からの調達であるが、これまでは海外向きの人材を採用したり育成しているわけではなかった。ただ、古くから留学制度があるため、その経験者が自然と駐在候補者となってきた。また、米国=先進ITということもあって、IT部門でも留学経験者は少なくない。今のオージス総研の役員数名も留学経験者であるし、今もニューヨークやテキサスには情報通信部出身者が赴任している。

 エネルギーというのは人口趨勢や産業構造に依拠してマーケットが決まってくる。当時からオール電化競合や関西市場での余地を鑑みれば、海外進出は選択肢のひとつだったと思う。ただ、「エネルギー事業として海外で何ができるか」が模索されていた中、ニューヨーク事務所が探してきたテキサスにあるガス火力発電所の40%所有権買収がなされた。ちょうど私が赴任する2004年のことである。同年スペインの火力発電所、翌年に米国の別の発電所群と立て続けにM&Aがあり、これが潮目となったと思う。

 欧米のエネルギー業界では分業が進んでおり、あまり知られてはいないだろうが発電所やガス導管網も収益物件として売り買いの対象である。脳天気な私としては優雅な駐在員生活を夢見ていたが、前任者から聞いていた生活とは異なり、物件探しが加わった(笑)。やってることは、頭は使わず足でプレーヤー(弁護士、投資銀行、オーナー等)へのひたすら訪問調査である。(後に、事務所は現地法人化)

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