部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)
「人間ちょぼちょぼ主義」人間の能力はそれほど高くはないため、何事かを成し遂げようとしたら他人の力が必要になる。ならば任せないかぎり、大きな成果を上げることはできない。
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マネジメント能力の限界を知る――人間ちょぼちょぼ主義
私は人間の本質は時代が変わってもそうは変わらないと思っている、「人間ちょぼちょぼ主義者」です。"ちょぼちょぼ"とは関西弁で"みんないっしょ"の意味ですが、要するに「人間の能力は、それほど高くはなく」「人間には、とくに賢い人も、とくにアホな人もいない。みなちょぼちょぼである」。そして、「ちょぼちょぼの自分」にできることは限られており、何事かを成し遂げようと思っても、一人では何もできない。でも、他人の力を借り、それぞれの長所が生かされたダイバーシティなチームが構成されると、例えば100人に仕事を任せ、100人分の成果を上げることも可能になります。
役職が付き、はじめて部下を持った皆さんは、会社や周囲の期待に応えようと胸を躍らせつつもコミュニケーションの取り方や、仕事の指示の仕方、時間の使い方など頭を悩ますことがあると思います。
これまで、私は人生の大半を典型的な大企業で過ごし、企画部、海外現地法人や国際業務部長などを経験し、退職後の2006年に現ライフネット生命の準備会社を立ち上げ、生命保険業免許を取得して2008年にライフネット生命保険をスタートさせました。ちょうど還暦の60歳の頃です。パートナーに親子ほど年の離れた30代の岩瀬(現・ライフネット生命保険・代表取締役社長兼COO)を選んだのですが、それらの経験から、少しでも皆さんのお役に立てるのであれば、と思い筆を取りました。
日本生命にいた時代に、始めて持った部下は、1人だけでした。当初は「手取り足取り」丁寧に指導をしました。ところが部下の数が2人、3人、4人、5人……と増えていけばいくほど「一人ずつ、きちんと指導するには時間が足らない。これは何とかせなアカンな」と考えるようになり、出した結論は「部下を細かく指導するのはやめよう」でした。理由は「人間の能力の限界」が見えたからです。そこで、歴史上の人物で私がロールモデルとして尊敬しているモンゴル帝国の第5代皇帝クビライに習い「広く浅く、10人を均等に見る」管理方法に変更しました。
かつて地上最強だったモンゴル軍の組織図を例にとると、1万人隊長は、「10人の1000人隊長」を部下に持ち、部隊の指揮を任せます。1000人隊長は、「10人の100人隊長」を部下に持ち、部隊を任せる。100人隊長は、「10人の10人隊長」を部下に持ち、部隊を任せる。そして、10人隊長は、「10人の兵士」を部下に持つ。つまり、どの隊長も、管理している部下の数は「10人」です。このように10人ずつマネジメントをすると、1万人部隊も容易に統率できるのです。多くの部下を持つなら、「部下の仕事をひとつひとつ丁寧に見よう」という考え方は捨て、部下に権限を与えて、仕事を任せるしかありません。
では任せるにはどうすればよいか。「誰が、何を、どこまで(いくらまで)決定できるのか」「自分が負うべき責任は、どこまでなのか」といった権限の範囲をハッキリさせることです。権限を与え、仕事を任せたあとの大事なルールは、ひとたび権限を委譲したら、その権限は「部下の固有のもの」であり、上司といえども口を挟むことはできないということです。「100万円以上500万円未満なら、部長が決める」「100万円未満なら、課長が決める」というルールを設けたとします。この場合、「100万円未満の決定権」は課長の固有のものです。職責が上位の部長でも、課長の権限を脅かすことはできません。「仕事を任せる側」はこうした「権限の感覚」を身に着けることが重要です。
的確な指示を出すための「4つの条件」
「権限の感覚」を持たない上司は「任せる」と「丸投げ」の違いが分かっていません。「丸投げ」は指示が曖昧で、「何でもいいから、適当にやっておいてくれ」といった指示で、「任せる」は指示が明確で権限の範囲も明確にすることです。「キミにはこういう権限を与えるので、こういう結果をだしてほしい」といった「権限の範囲を明確にしたうえで、的確な指示を与えること」です。任せ方のパターン例は、
パターン(1)「権限の範囲内で、好きなようにやらせる」
パターン(2)「仕事の一部分・パーツを任せる」
パターン(3)「上司の仕事を代行させる」
それぞれの詳しい背景や説明は著書に述べてありますが、自分自身の経験からもプレッシャーを感じて苦しくなった経験が、その後の糧になっています。大きな仕事を任されると、責任も重くなり、否応なく階段を上がることになります。その結果、「自動的に視野が広くなる」のです。
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