お客様本位――これこそがユナイテッドアローズの原理原則:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(2/4 ページ)
日本のセレクトショップとしてトップレベルの売り上げを誇るユナイテッドアローズ。その強さの源泉は何か。同社のコアコンピタンスについて、同社上席執行役員の佐川氏と一橋大学大学院の大薗教授が対談した。
販売スタッフの地位向上を目指す
大薗 リピート顧客が多いのもユナイテッドアローズの特徴です。顧客は何を求めて、どうしてリピーターになっていくのだと思いますか。
佐川 以前は競合他社にない仕入れ品や、際立った自社企画品を販売していたので、商品力にひかれて顧客化された消費者が多かったです。現在は他社も追い付いてきており、商品で強烈な差別化ができているという状況ではありません。
それでもユナイテッドアローズの店舗で買い物して、リピーターになってくれる方が多いのは、スタッフの高いホスピタリティがあるからです。例えば、とても腰が低く、懇切丁寧に接客してくれたり、返品を受け付けたりしてくれます。購入後しばらくしてお客様がなくしてしまったボタンを、血眼になって会社中を探して届けたというエピソードもあります。他社と決定的に違うのはこのホスピタリティです。販売スタッフによるこうした体験を通じて多くの方がファンになっていくのです。
ユナイテッドアローズの創業時のミッションとして、販売スタッフの社会的ポジションを日本でも上げたいというものがありました。ですので、販売スタッフを大切にしているし、そのための人事制度や理念教育をしています。給与も販売の世界では高い水準です。これらが販売スタッフの大きなモチベーションになっていますし、豊かな気持ちがあるからこそお客様に伝わるサービスを提供できるのです。多くの販売スタッフが長く働ける環境がユナイテッドアローズにはあります。他社であれば、ずっと販売スタッフの仕事を続けていていいのかという不安が付きまとうかもしれません。
事業をトータルで評価
大薗 ユナイテッドアローズはどのような組織体制で事業を運営しているのでしょうか。
佐川 事業部制を敷いていて、商品、販売、宣伝が事業の中に入っています。商売に関する部分は事業体で完結しており、そこでの利益が事業の評価になるというシンプルな構造です。システムや人事などは横断的な組織になっています。
基本的には組織全体で考えています。例えば、商品、販売、宣伝のどこかで問題があった場合、全事業の問題になるし、仕入れ品が売れて自社企画品が売れなくても、トータルで業績が良ければ商品部は評価されます。
大薗 仕入れ品と自社企画品、あるいはメンズとウイメンズが一緒に評価されることによる反作用はないのでしょうか。例えば、弱い部門の責任があいまいになるので、強くなるためのプレッシャーが掛かりにくいとか、強い部門は養っている形になるため、不公平感があるとか。反作用がないのであれば、こうしたことをポジティブな力に変えるための何かがそこにあるのでしょうか。
佐川 結局は、お客様のためになるかどうかに帰結するのです。仮に店舗の半分をウイメンズ商品が占めていて、売り上げが5割であったとしましょう。来店する人は女性の方が多いので、お客様の期待に応えられてないという評価になります。組織内の優劣に目が行くというよりは、お客様に評価されていないという点に目が行くわけです。いかにお客様を満足させているかが重要なのです。
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