4000人のルート営業はすべて正社員 茶産業育成を支援する伊藤園:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(2/3 ページ)
原材料が高い自然素材を中心とした清涼飲料に特化してビジネスを展開する伊藤園は、なぜ飲料業界平均よりも高い収益性を実現しているのだろうか。同社の競争戦略の核心を聞く。
米国でも成功したルート営業
大薗 緑茶飲料は伊藤園にとって強いコアであり、これがイノベーションを推し進める上でポジティブに作用しているという印象を受けました。
笹谷 緑茶飲料に関しては、缶やペットボトルといった容器でもイノベーションを起こしたことが、結果的に野菜飲料などほかの飲料でもそのノウハウを応用することに繋がりました。緑茶で培ったビジネスモデルの経験が生きているのです。
大薗 伊藤園のユニークさは営業体制にも見られます。ほかの飲料メーカーでは、製品を最終出荷するボトラーがあったり、独立系の会社にルート営業をアウトソーシングしたりすることが多いですが、伊藤園ではすべてを内製化しています。この意義は何でしょうか。
笹谷 現在、約4000人の正社員のルート営業が全国201拠点から顧客に商品の説明、商談、配送を行っています。それぞれの担当者が常に同じ顧客と接しているため、需要の把握や最も適した提案を行うことができ、きめ細かい営業展開につながっています。まさに全国の取引先にカスタマイズできるという強みです。
大薗 アウトソーシングするとやはりここまでのきめ細かい提案は難しいですか。
笹谷 はい。現在の方法によって、営業マンのスキルが上がり、それぞれの顧客接点が強化されるとともに、訪問を丁寧に行うことで需要をくみ取ります。こうした独特の流れがなくなると、市場把握が弱くなってしまうでしょうし、売り場に見合った提案ができなくなります。
大薗 ルート営業を止めるということはありませんか。
笹谷 ありませんが、顧客の変化は目まぐるしく変化するため、ルート営業のスタイルも常に革新を続けています。10年前と比べてバージョンアップしたものになっています。
その例が、米国でルート営業を展開していることです。ニューヨーク・マンハッタン地区でルート営業を応用しています。また、最近ではルート営業のノウハウを生かしてシリコンバレーでも営業成果を上げています。日本でルート営業を経験した営業マンが同じ手法で現地の顧客に、粘り強く、きめ細かく提案した結果、次第に伊藤園のファンが増えていき、シリコンバレーという発信力の強いエリアでは、無糖飲料としてお〜いお茶が人気です。
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