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4000人のルート営業はすべて正社員 茶産業育成を支援する伊藤園ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(3/3 ページ)

原材料が高い自然素材を中心とした清涼飲料に特化してビジネスを展開する伊藤園は、なぜ飲料業界平均よりも高い収益性を実現しているのだろうか。同社の競争戦略の核心を聞く。

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センサー技術で茶葉を遠隔監視

大薗 伊藤園の人材育成についても教えてください。

笹谷 伊藤園では、最も大切な財産は「人」であると考えています。自己啓発を教育の根幹とし、社員のやる気を刺激するさまざまな制度を制定しています。具体的には、営業の基礎や応用、財務関連、マーケティング、組織などのカリキュラムから社員が学びたい内容を選び、1年間課題やグループ討議に取り組む「伊藤園大学」と、経営感覚を身に付けるための「伊藤園大学院」を用意しています。

 もう1つは、お茶について高い知識や技術を持つ人材を育てるための社内資格制度「ティーテイスター(茶資格)」があります。2013年5月時点で社員約5300人のうち1460人が資格を取得しています。

 人材育成の成果が、先ほどお話した茶産地育成事業につながっています。農業技術について非常に詳しい社員が農業者の良きパートナーになり、機械運用技術のノウハウ、肥料のタイミングなどを指導します。農家の人とのネットワーク作りにもなります。一緒に学び、お互いにスキルアップしていくことを目指しています。そのほか、茶園の機械化、大規模化、IT化にも取り組むことで、生産性の改善も図っています。

 これが現在、話題の持続可能性をパートナーとともに考え、人づくり、地域づくりにつなげるESD(持続可能な開発のための教育)という手法です。

 伊藤園では、社会対応力の強化も経営戦略に取り入れており、国際標準のISO26000での「本業CSR」、CSVで共有価値の創造、そしてESDで人材育成と、3つのSを経営戦略に生かしています。

大薗 茶農業におけるIT化というのは、具体的にどのようなものでしょうか。

笹谷 リモートセンシング技術を応用した茶の栽培、管理が代表例です。これは、各種センサーを茶園に設置し、遠隔地で気候や育ち具合などに応じて茶葉の状況を監視しながら、摘採時期を感知する仕組みです。茶は同じ茶園でも傾斜や区画によって成長が異なるので、細かな管理が必要となるのです。

 IT活用に関しては、そのほかにも、営業担当者へのタブレット端末配布の検討や、ソーシャルメディアへどう対応していくかの議論なども進めています。

大薗 本日はどうもありがとうございました。

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