「デジタルという名の竜を飼いならせ!」──CIOアジェンダ 2014:Gartner Column(2/3 ページ)
デジタル・テクノロジは、既存の勢力をくつがえすほどの巨大な力を持っている。うまく扱えば強力な味方になるが、敵に回すと面倒な相手である。
テクノロジ別支出ランキング
IT支出全体の話は、このくらいにして、次は、サーベイに参加してくれたCIOが、どのようなテクノロジに支出を考えているのかを見てみたい。実は、今までのCIOサーベイでは、テクノロジについて優先順位を聞いていたのだが、今回は、初めて、IT支出額の順にテクノロジを掲げてもらった。その結果が図2である。これを見ると、1位から6位までの支出額が比較的多いものは、順位の前後はあるものの、中身は、グローバルと日本と変わらないことが分かる。
しかし、この結果には、大きな違いがあると当社の日本人アナリストは指摘した。グローバルでERPは第4位だが、これは、巨大なレガシーERPシステムから、疎結合のアプリケーション・アーキテクチャ(クラウド・コンポーネントとの統合など)へと移行する。「ポストモダンERP」とガートナーでは呼んでいるが、「ポストモダン化」への投資こそがグローバルでの投資の正体である。一方で、日本では第1位だが、大半の企業では、国内でERP配備が完了したので、これから海外の事業所・工場にも展開しようとしているのであり、グローバルに比べると周回遅れであることを認識すべきだと言う。
「デジタルという名の竜」の意味
さて、ここまでは予算を中心に話を進めてきたが、今回CIOサーベイの主題になっている「竜」という言葉であるが、皆さんは、どんなモノを想像するだろうか。恐らく、大蛇のような形で、鋭く太い爪が生えている手足があり、クチからは炎を吹いている姿を想像するのではないだろうか。もちろん、竜は空想上のモノではあるが、巨大な身体と強力なチカラを持ち、敵に回すと面倒な相手だが、味方についてくれるならば、この上なく助かる存在ではないだろうか。
今回、ガートナーでは、デジタル・テクノロジを竜に見立てたのである。世の中を全て焼き払って、ゴロリと既存の(勢力)地図を書き換えるような巨大なチカラを持つのが、デジタル・テクノロジだということだ。しかし、うまく味方に付けられないならば、それは、この上なく残念な結果を生むに違いないだろう。
CIO率いるIT部門が、デジタル・テクノロジを用いて直接的にビジネス・イノベーションを生み出すことができれば、それは最高の貢献に違いない。しかし、IT部門の貢献は、そればかりではない。例えば、先にIT部門外のIT支出のところで、「既存のIT部門はアテにならない」からだと述べたが、フロント・オフィス部門から見たら、(開発)速度・コスト・ビジネススキルのどれをとっても、「アテになっていない」と見えるからこそビジネスやマーケティング部門は、自身で外部のITリソースと接触し投資実行する。「デジタルという名の竜を飼い慣らす」ためには、フロント・オフィス部門の間尺に耐え得るような能力を持つIT部門になる必要がある。それでは、具体的にどのような能力が必要なのか。
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